2023ジャパンツアー
「とびにちゅうい」


<その2>


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人生最悪の旅? それとも最良??
本人にとっても晴天の霹靂だった、急な日本行のご報告

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Cあじさい尽くしの日


鎌倉 三日目


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私の朝食。


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宿六はこっち。
(やはり日々の細かな積み重ねが
体型に現れますわね)



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 そのまま昼食になだれこみます。鎌倉ビールに釜あげしらす。
 ビールは小麦なので、この六年間避けていましたが、ぜんぜん大丈夫でした。


 私たちの「とんびツアー」は、コローナを巡るさまざまな制約が、米国でも日本でも全廃された直後も直後、ほんとの直後でした。まあそれだけは、ギリギリになって呼びつけられて、唯一良かったことです。
 でもまだこの時点では、海外からの旅行者は、「昔よりは多いね」と感じた程度です。



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海外からのみなさんとても嬉しそう。
そりゃあ初めて日本へ行ったら
盛り上がりますよね、
まるきり別の星だもの!


 初鎌倉の宿六のために、いちおう鶴岡八幡宮に行き、ここで公暁がーみたいな話はしておきました。お寺や神社や教会は、すでに一生分見てますので、すぐ切り上げましたが。


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 今日は本気で雨が降りそうです。きのう軽くハイキングしておいて良かった。
 いろいろ疲れも出てきましたし、午後は雨が似合うところを、少しだけ見ることにしましょう。



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 こんな日に傘も持たずに出かけたので(私も血中外人度が高くなったものだ!)、本降りになって困ってしまい…
 雨宿りのため建長寺へ。有名だという禅庭で、宿六はしばし熟睡。



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カラスの声を聞くと、
日本に来たなあと実感します


 禅庭は、残念ながら私の理解の外ではありますが、新緑は純粋にそれだけで美しいです。
 一連のびっくり事件で低迷中の気分も、みずみずしい緑を見ていると、すみやかに整理され昇華されていくのを感じます。


 2020年から21年にかけて、無意味な長期ロックダウンで家に閉じ込められたとき、なぜか Vivir bien es la mejor venganza !(良き暮らしに勝る復讐なし!)という言葉が、いつも頭のすみっこにありました。
 まともにぶつかってもお話にならない相手は、敵とみなすことじたいがエネルギーの無駄。それより自分の意識をさっと逸らして、そのぶん節約したエネルギーを、日々を楽しむことにこそ使おう。そうすれば意趣返しの必要じたいが消えてしまう…ということかと思います。


 今回も基本この線で行って、早めにフクザツな気分から卒業したいと思います。


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 これは………(5分ほど経過)…あ、ハナミズキ?
 ハナミズキの季節に日本に来るのは、ほぼ30年ぶり。なっかなか名前が出てきませんでした。



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 こちらはモンキアゲハ?たしか黒いアゲハチョウを、鎌倉蝶って呼ぶのでしたっけ?
 ペルーに移住するまで蝶には興味がなかったので、日本の蝶に会えるのはとても嬉しいです。



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 少し雨脚が弱まったところで建長寺を飛び出して、途中でビニール傘を買って、明月院へ向かいます。

 あじさいはやっと少し色づき始めたところ。まだ青には染まり切っていなくて、クリーム色が目立ちます。
 私は満開時の、姿も色もぼったり重すぎるあじさいは、あまり好きではないので、ちょうどいいときに来ました。人出も少なくて、おかげであじさいだけの写真が撮れます。



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 むかし植物写真の冨成先生が、
 「さいきんの鎌倉のあじさい。あれはあじさい本来の姿じゃない。肥料の入れすぎです。
 あんなに花が大きく、色も濃くなってしまうと、あじさいらしい風情がなくて、私は嫌いですね」と、容赦なく一刀両断になさっていたのを思い出しました。


 そのとおりと思います。
 あざやかな色のあじさいが、数鉢ほど置いてあるのはきれいで大好きですが、全山!となるとくどすぎます。少なくともお寺には似合いません。



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 あじさいの間の小道で、韓国の女の子たちに会いました。
 着物を借りたらしく、襟元にレースをあしらったり、幅広のチュール地を帯代わりにしたり、革靴を合わせたり、といった風で、なかなかかわいらしい。
 いっぽう同行の男の子たちは、それが流行なんでしょうか、ひどくつんつるてんに着付けてもらっていて、どう見ても堅気ではないお姿…
 大正ロマン風の女の子たちと並ぶと、ちょっとおもしろい組み合わせでした。



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 うっそうと木が茂り、薄暗くなったところには、イワタバコもたくさん咲いています。

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こうやって色づいていくのですね。
でもこのへんで止まったほうが、
上品かもね…


 また雨が強まってきました。
 でもそれが嬉しいです。レインコートを着て、傘をさして歩くだけでも、私たちにとっては立派な観光旅行。
 ちゃんとした雨の中を傘さして歩くのは、おそらく1999年のサンティアゴ・デ・コンポステーラ以来です。



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 池袋に着いてすぐ買ったインクブルーのバッグと、インクブルーのレインコート。
 レインコートを買うことじたいが、なにやらもの珍しくてわくわくします。
 (リマでは夏向きレインコートの使い道はないので、記念に写真を撮ってからしまいました。もしかするともう二度と着る機会ないかも)


 右下の飛行機用マクラは、行きがけにカヤオ空港で購入。リャマ柄でちょっといいでしょ?
 ロサンゼルスで走るとき、こいつがかさばって実に邪魔でしたが、返って情がうつって連れ帰ることとなりました。
 以上、ブルーな旅につきあってくれた、ブルーな小物群。



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 明月院は、早々と4時には閉門。あわただしく追い出され、余韻もへちまもなくてがっかりです。
 さらに「明月院通り」には、まださほどの人出でもないのに、ご苦労様にも案内係が点々と配されています。そして「こちらへお進みください、あちらへお進みください」と始終声がかかって、組み立て工場のレーンにのせられたような気分です。
 結局日本の観光地は、どこへ行っても「順路通りに歩かされるだけ」というところがありますね。


 不完全燃焼のまま帰るには、ちょっと惜しい夕方です。細かな雨が音もなく降って、梅雨の走りらしい風情たっぷりですから。
 すると北鎌倉の駅近くの、古民家ミュージアムというところに、あじさい展の案内が出ているのに気づきました!



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 「何時まで開いていますか?」
 「6時までですから、ゆっくりどうぞ。山あじさいが、ちょうど咲き始めたところですよ!」
 そう受付の女性に教えてもらって、嬉しく入ります。お客さんはだれもいません。
 古民家に囲まれたこじんまりとした庭では、新緑と無数のあじさいが、雨に打たれて静まり返っています。いいですねえ。



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 近年日本で山あじさいが流行中、というお話だけは聞いてましたが、見るのは初めてです!
 (以下、山あじさいや園芸種やいろいろ混ざっていると思いますが、いいなと思ったのをぜんぶ載せます)


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 あじさいの世話をなさっている女性(さきほどの受付の人)からお話を伺いました。
 この季節、百種あまりのあじさいを展示しているそうですが、半分以上が山あじさいとのこと。
 小さな愛らしい山あじさいは、繊細なところがあるので、雨の当たり具合や日光の強さなど考えながら、小まめに鉢を動かして管理なさっているそうです。



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 カシワバアジサイも一株。北米種のこのあじさいなら、日当たりにも強いそうですし、リマでも順応しやすいかもしれません。
 ペルーのどこかで栽培している人、いないかな?



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まあなんという色…


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 隣家とのあいだの狭い通路に、あじさいの小径が作られています。
 あじさいの葉に当たる静かな雨音が、もうたまらなく梅雨時の日本!ですね。
 襟首に、冷たいしずくがぽとっと落ちる感触まで懐かしいです。



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 さらに古民家の中では、あじさい尽くしの品々を展示しています。
 さきほど明月院で会った韓国の女の子たちも、このミュージアムに入ってきましたが、庭先で写真を撮っただけで帰ってしまいました。
 せっかく着物姿でしたから、これも見てもらいたかったなあ。



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 江戸時代のからむし織(苧麻)の着物、だそうです。

 刺繍でのあじさいの表現がおもしろいですね。近くからではよくわかりませんが、少し引いて見ると、ふわっと丸いあじさいが浮かび上がります。
 刺繍糸は暖かい色なのに、とても軽く涼しそうに見えます。こんな雨の日に新緑の中でさらりと着たら、見る人の目にさぞ爽やかだったでしょうね。
 ぜひ粋な大年増にこそ、着てもらいたいです。



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 見納めに、もう一度庭をひとめぐり。
 静かな雨とあじさいの七色を、ここで味わい尽くしました。明月院よりずっと良い思いをさせてもらいました。



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 今日は鎌倉の雨を全身で感じて、リマとの風土の大きな違いが、あらためてよくわかりました。
 パチャカマックに戻ったら、もう一度、あじさいを育ててみましょう。
 庭の土を酸性に傾ける工夫をして、アンデス産のミズゴケをたっぷり使って水持ちを良くすれば、次の夏、エルニーニョの厳しさが予測される夏!でもうまくいくかもしれません。



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 雨の中を嬉しく歩き回って、かなりおなかが空きました。今日は迷わずまっすぐ、駅前の居酒屋へ。やはり私たちには、こういう野蛮な?料理が向いています。



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 ところで池袋で入った何軒かの居酒屋には、どこもなぜか、よそ者嫌いの気配がありました。
 お店独自の小さな決まりを知らないよそ者を、店員と常連客がいっしょに仲良く呆れたように見やる、という感じで、その心理が興味深かったです。


 日本にたまーに戻るたびに、以前は島国根性丸出しだったわれわれ日本人が、どんどん外国人&よそ者慣れしていくのを実感しますが、常連客頼みの居酒屋には、今でもそういう古さが残っているのかもしれません。
 その身内感を好む人も多いでしょうから、それがわるい、というのでは全くありませんが。


 でもここのお店は、あっさり明るい対応で、われらよそ者には居心地が良かったです。まあ鎌倉でよそ者を嫌っていたら、仕事にはならないでしょうね。


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 宿六大喜び。
 焼き鳥、焼き豚なども注文して、この晩はしっかり動物性たんぱく質を補給しました。



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 抹茶ソフトクリームに始まって、抹茶アイスクリームで終る、良い一日でした。


Dシラスが泳ぐ水族館



鎌倉 四日目


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 今日は富士山はないことになっています。
 江の島のすぐ上あたりに、箱根山はよく見えています。後日そちらにも行きます。



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 灰色にもやもやした風景の中、ときどきチカッ…チカッ…と光るのはなんだろう?と気になっていましたが、あっそうか、江ノ電が行き来しているのですね。
 部屋から江ノ電が見えるのは楽しいな。



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 しっかしこのごちゃごちゃ感、日本もさほどペルーに負けてません。
 先進国でこれだけ電線だらけの国も、そうそうはないでしょうから、むしろ日本独特の風情のひとつ、なのかもしれませんが。
 観光立国をめざす以上は、まだお国にお金があるうちに、埋蔵工事やっとけばいいのにね。



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 江ノ電の、七里ガ浜駅近くのおうちで。日本で見るあじさいは、もう限りなくさまざまな品種があって、見飽きるなんてありえませんね!昔はこんなになかったですよね?
 この約30年間、もし日本で暮らしていたら、バラとあじさい集めで破産してたと思います。それもまたペルーに移住してよかったことのひとつです…



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 宿六はペルー人なので、あらかじめ小銭を用意してから発券機に向かう、なんてことはいたしません。それで毎回、しびれを切らせた発券機君に、「おかね、またはカードを入れてください!」と叱られます。


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 江ノ電が海に出ました。こ、これはどっからどう見ても……冬のコスタ・ベルデ!(リマの海岸)
 波待ちサーファーの浮かび具合までそっくりです。もちろん舗装はきれいすぎるので、これはリマじゃないとわかりますが。



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平日のサーファーさん。
これぞ人生。



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 大蛇のようにのたくりながら、家々のすきまを走る江ノ電に、宿六がびっくりしています。
 こういうのは何一つ変わってなくて、懐かしいなあ。



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 腰越駅で停車したとき(…宿六は判官びいきなので、コシゴエの地名にはちょっと反応…)、車窓のすぐ下に目をやると…
 サザエやカキのカラに、かわいらしく多肉植物が植えてあります。近いけどここからは見えない海を感じます。
 近所の人が、電車客を楽しませようと飾っているのかな。私もうちに帰ったら、手持ちの貝殻に植えてみよう!



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あ、江ノ電もなかのお店!


 江ノ電が路面電車化する短い区間は、スリルたっぷりで、遊園地のアトラクションそのものですね。


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 江の島をぐるっとまわって海風に吹かれるには、ちょっと寒すぎる日だったので、新江の島水族館へ。相模湾ゾーンがとても魅力的で、特にマイワシの大群には見とれてしまいます。

 ここでビデオを撮って、留守居役のベンハー君に送ったところ、大好評で、その後も何度も再生して楽しんでいるそうです。
 折り返し向こうからは、ハスミニ猫を抱っこする猫シッター百合子ちゃんのビデオが届きました。こういうところは、ほんと良い時代になりましたよねー。



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水槽にはりついた
仔猫みたいな子供たち。



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大人もはりつきます。
「私とあなた、どっちの顔が
よりでかい?」



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この水槽、家に欲しい…


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 いちばん感動したのがこれ!生きたシラスが泳ぐ水槽!
 そもそもシラスがカタクチイワシの稚魚だということすら、きちんと認識しておりませんでした。すみませんでした。
 言われてみるとたしかに生シラスは、とってもカタクチイワシな味です。



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 泳ぎ回る生シラス…いえ、カタクチイワシの稚魚。どうしても食材に見えてしまいますが、世界で唯一、ここだけの展示なのだそうです。
 透き通った稚魚は見るからに繊細ですから、管理もさぞたいへんなことと思います。



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油断しきって熟睡するカピバラさんもいます。
下の絵本のキリっとしたカピバラ一家とは
だいぶ違いますね。


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カピバラさんといえばこちら!
(Amazonのページが開きます!)


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 そろそろお昼どき。
 遠足の子供たちが、水族館のひやっとするホールに座って、そこでお弁当を広げています。
 宿六が、「うわ、かわいそうに!」と大声をあげたので、急いで制止…(なんでさしさわることに限って、必ず日本語で言うのかね…)
 でも私も同感です。芝生の上や景色のいいところなら、わかるのですが。どこかにちゃんと座らせてあげられないものかしら??



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 地魚を出す定食屋さんでお昼。さっき生前のお姿を拝見したばかりの、生シラスさんもいらっしゃいます。
 釣りたてというあじのたたきも、あとで一皿追加。



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 定食は「さざえの壺焼き(小)つき」とのことでしたが、想像以上の(小)でした。ふふふ…

 このあといったん、いやいや東京に戻ります…委細は省略します……



E小田原・箱根で誕生日のやりなおし!



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 東京での手続きは、まだ進展がなさそうです…
 そこで、ものすごい丹色のロマンスカー「はこね1号」に乗って小田原へ。



小田原


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 着くとすぐ、先日のミニミニさざえの恨みをはらすべく、早川漁港へ。
 今日もちょっと寒すぎるくらいのお天気です。



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魅惑的な海鮮コーナー


 好きなものを自分で焼いて食べる、浜焼きのお店に入ります。雨の水曜日でだーれもいません。
 いろいろと厳しい決まりごとのあるお店で、さいしょ、何もわかってない私たちに邪険だった店のお兄さんも、大はしゃぎの老中年二人にだんだん優しくなってきます。


 今回の旅でわりと楽しんでいるのが、マニュアル通りのカチンコチンの接客をする人に、突然ふっと違う話題を振って笑わせる、ということ。特に宿六が得手とする技です。
 うっとおしい老中年め…と思われたに違いありませんが、でも不意をつかれた人が、自然なやわらかな表情に変わる瞬間は、なかなか良いものです。



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小田原らしい干物のいろいろ


 そのいっぽうで、ごく若い世代の中に、時々とても客あしらいの上手な人がいて、びっくりしました。
 生真面目すぎる日本人は、うっかりすると必死決死のおもてなしに走りがちです。
 でもそういう若い人たちは、リラックスした上でなお丁寧な接客をしていて、大いに感心。



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 食べ放題のお店の常で、こういう目くらましもいろいろ仕込まれていますが…
 (でもミニたい焼きはかわいい!)



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 やはりここは、生け簀からすくい放題のさざえ一択でしょう!!
 料金は80分税込み3980円也。さざえのつぼ焼きは、江の島で800円くらいするらしいので、5個食べればクリアですね。いえ、別にクリアしなくてもいいんですが、私でも軽くモトがとれそうです。
 この十年ずっとさざえを食べたいと思っていましたが、これでまたしばらくさざえなしで生きて行けます。



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 テーブルの上でじゅうじゅう焼くので、たいへんな熱気が伝わってきて、また貝のみなさんが吹き出す熱湯も飛んできます。寒いくらいの日でちょうど良かったです。
 テーブルにはお醤油が置いてありますが、かけるとみんな同じ味になるので、海の塩味だけのほうがおいしいですね。


 この日の目玉は巨大バイ貝だそうで(厳密にはふつうのバイ貝とは違う種類とのこと)、宿六が夢中で1ダースほど平らげました。
 むかし宿六はさざえ類がだめで、苦いの気持ちわるいのと散々でしたが、いつのまにか味覚が成熟したようです。



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 うしろには炊飯器もありますが、もちろん私たちは近づきません。こういう店では、高たんぱく質&高コレステロール慣れした私たちは強いのだ!
 ああでも、あら汁はおいしかったです。ほかに海鮮カレーもあるそうです。



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 ときどき店頭にはない料理が配られます。いつもは並ばないといけないそうですが、今日は誰もいないので、席まで持ってきてくれます。
 これはカキのガンガン焼き?と言っていたかな?



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 こちらは本まぐろのミニ鉄火丼。中落ち少々つき。

 …これを書いている今ごろ(9月)になると、ピカピカの新さんまも食べ放題になるらしく!いいないいなー。行きたいな。
 ペルーは海産物は豊富なのに、どうも扱いが下手です。あっさりそのままの味を生かした調理法、ないですよね。セビッチェなんてライムと玉ねぎの味しかしませんしね(あくまで個人的な感想です)。
 そのうちぜひ早起きして魚市場へ行って、自宅浜焼きをやろう、と思うのですが、なかなか「そのうち」が巡ってきません。



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 一応、小田原城へ。私は新築のお城は興味ありませんが、宿六はこれこのとおり、大いに楽しんでおります。
 たしかに展示は行き届いていて、日本のお城の構造がよくわかります。



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 天守閣から眺める、一夜城方面。むかし祖父母がこのあたりに住んでいました。

 祖父(ビワの根元に犬を埋葬したほうではない、母方の祖父)は、元気がありあまっている人でした。百歳ごろまでほぼ毎日、往復7、8キロを歩いて一夜城址に登るのを、日課としていたそうです。
 そういう体力みたいな使える体質は、どうしてぜんぜん遺伝して来ないんでしょうね。ろくでもない遺伝ほど優性なのかな。とすると人類の未来はないな。



箱根


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宿六君、これ買ってくれても
私はぜんぜん構わないよ!


 次は箱根へ向かいます。
 誕生日は例の出来事のおかげで、「朝っぱらからケチをつけられた」感いっぱいでしたので、もう一回やりなおしです!


 予約サイトにあたっているとき、「小田原までの専用車送迎つきプラン」というのを見つけて、即予約。なにしろペルーからの移動では苦労しましたから、とにかく楽な移動が望ましい…
 そしたらこーんなので迎えに来てくれて、小田原から箱根まで、新緑の中をゆったりと走り抜けます。ああいい気分。


 こういう贅沢って大好き。…などと若い頃にうっかり言おうものなら、すぐに母から「そんなことでは将来、路頭に迷うに違いない!」と叱られましたねえ。
 路頭に迷うって不思議と自由の香りがして、きらいな表現ではなかったですが。



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 箱根のアップダウンすら感じさせないなめらかな運転と、鮮やかな緑、緑、緑で、良い感じにぼーっとなったところでお宿に到着。
 8室だけの小さなホテルで、箱根外輪山のひとつ、明星ヶ岳の中腹に建っています。なのでテラスに出ると、絶景のただなかにふわ〜っと浮かんでいくような気がします。
 お向かいさんはもちろん箱根山(の早雲山)、その下に広がるのが強羅の町並み。


 山の上のほうの、大きく崩れたところ。いかにも火山火山していて、こわいけれどエネルギーを感じて、なんだか目を離せなくなります。
 早雲地獄と呼ばれる爆裂火口だそうですが、早雲地獄も爆裂火口も、名前だけで恐ろしい。


 山の向こう側にある大涌谷と同じに、早雲地獄でも水蒸気で温泉を作っていて、それが強羅の町に引かれているそうです。


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 このホテルは、ワイン類がフリーフローだそうで、宿六にはなによりの誕生日「再」祝いです。
 (フリーフローというのは、今回新しく覚えた表現。点滴で心配なフリーフローではなくて、お酒飲み放題のほう)


 この景色の前で、さっそく注いで下さるシャンパンを傾けつつ、チェックインです。
 箱根登山ケーブルカーが、ゆるりゆるりと登り下りするのがよく見えて、ますますゆったりした気分になります。



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 大涌谷や、山のあなたの芦ノ湖へ向かうケーブルカー…じゃなくてロープウェイも(これいつもまちがえます)、ひっきりなしに行き来しています。
 箱根山の精巧なジオラマを眺めているみたいで、ここすごく気に入りました!
 クリスマスのベレン(聖家族の一そろい)の背景に、こういうの作りたいな。



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 部屋へ行くとシャンパンが冷やしてあります。しかたないですね、ではもう一杯…


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 冷蔵庫の中も、なにやら楽しげな色あいです。
 こちらもいくらでも追加OKだそうですが、いやいやいやいや飲めません、そんなには。



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 何度でもどうぞ、というおつまみ各種も、とうとうちょっとしか試せなかったなあ。
 またロビーにもワインがずらっと並んだバーコーナーがあり、ご自由にどうぞ、とのことでしたが、そこまで手が回りませんでした。
 (帰国後三ヵ月すぎても、いまだに宿六が悔しがっています)



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 部屋は灰色で統一。見た瞬間、ちょっと気がめいるかも…と思いましたが、なにぶん窓外は圧倒的な箱根の緑。
 室内に色彩がないのは、意外におちつきました。



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 パジャマのほかに、館内着なるものが置いてありました。たしかに名案。
 部屋の温泉に入ったあと、服をきちんと来てレストランへ行くのは億劫ですから。かといって、浴衣という雰囲気のお宿ではないですし。でも色はちょっと憂鬱ですね。


 ごたぶんにもれずコローナ太りの宿六ですが、日本のLサイズが入って喜んでいます。
 後日ユニクロにジーンズを買いに行ったら、やはりLでなんとかなって、ちょっとこれはおかしいです。ぜったい日本のサイズ、昔より大幅に大きくなりましたよね?


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この洗面所の左手のテラスに…


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…窓をあけて半露天風呂にできる
浴室があります


 源泉かけ流し(これも今回覚えた表現)だそうです。敷地内に源泉がある由です。


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 シャンパン片手にお湯に浸かっているうちに、暗くなってきました。
 (「飲酒後すぐの入浴はお避け下さい」という注意書きがありましたが、このホテルでそれ守れる人、いないんじゃないかな)



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 こうして見ると、箱根山の急傾斜ぶりがよくわかるなあ。
 感心して眺めているうちに、むこうの大きなホテルに、華やかに明かりがともりました。
 シャンパンと温泉に交互に浸かって、こんな夕景をぼーっと眺めて…たいへん良い気分です。



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 晩餐はおフランス系のようです。
 せっかくなので、お勧めのペアリングなるものをしてもらいます。ペアリングも今回覚えた新単語。
 ふだんリマで手に入るワインは、スペインに偏っています。なのでスペイン、および苦手な南米もの以外の辛口ワインで、とお願いしました。


 まず爽やかなおフランスのロゼから始まって(このビンいいな)、以下いろいろ出してもらいましたが、私はワインは好きか嫌いか、その二種の識別しかできません。
 でも大いに楽しんだ宿六の思い出のために、写真を載せます。たしかに撮っといて良かった、酔っぱらってぜんぶ忘れてしまいましたから。



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 「アミューズ」が出たところで、とつぜんですが、個人的に近年いちばん気にくわない日本語表現トップ3!

1)料理店の「アミューズ」…どこの言葉よ、アミューズって!
 背すじがぞわぞわする、半端なカタカナ外来語ですよね。どうせならきちんと最後まで言うか、あるいはあっさり「先附」じゃだめなのかな?

2)ネット上のありとあらゆる雑文中で、「○○しにくい」と言うべきところが、ぜんぶ「○○しづらい」となっている。なぜ?!
 「しづらい」は本来、「私の手ではちょっと殺り辛い…」的ないくぶん深刻な場面で使うものと思っていましたが、「このパンの袋、あけづらい」みたいに軽く使われています。
 つらいつらいの連呼はとても聞き辛いですし、もしかしてみなさん日常的に辛いのかな?と、ちょっと哀しくもなります。


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3)レシピ内で、「野菜に火が通ったら、調味料を加え」というべきところ、「野菜に火が通れば、調味料を加え」…となっている。
 じゃあ野菜に火が通らないこともあるわけ?とつっこみたくなりますが、たぶんそういっても意味は通じないのでしょうね。

 あと数十年もしたら、日本にいる若い日本人とはあまり言葉が通じなくなりそうです。それはそれでおもしろそうですけれど。


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 私は本来、こういうスカスカした配置のお料理は好みませんが、今日はちょっと別ですね。いろいろなワインに合わせるには、わるくないです、素直に認めます。
 実際のところ、見た目より(私の偏見による見た目より)おいしかったですし、とても楽しんでいます。



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たしか箱根西麓野菜のいろいろだったかと…


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たしか伊勢エビと桜エビのダブルエビ?
生まれて初めて桜エビをおいしく感じました、
鮮度がちがうのね。



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 私がはっきり味を覚えているワインは、これだけ。
 FONTANA FREDDAっていうワイナリー名がいいですね、ひんやりとした泉?その名だけでおいしそう。



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 日本到着の前に、宿六にぐさっとクギを刺しておきました。
 「お肉が出るたびに、日本語で大きな声で『小さいなあ!』と言うのだけは絶対やめて」と。
 また私のほうは、お皿にソースで模様が描いてあったり、エスプーマがのっているだけで、いつもなら味に対する警戒態勢に入ります。


 でもさっきの赤がよく効いて、またホテルの人もとっても親切なので、今夜は二人ともよけいなことを言わずに、おとなしく楽しんでおります。(だけどエスプーマはやっぱり苦手…)

 ワインは問題は何も解決してくれませんが、かわりにどんな時でも「いちいち深刻に考えなさんな!」と言ってくれる良い友達です。
 収入が数年途絶えたコローナ期に、けっこう楽しく過ごせたのは、たぶん赤ワインの切れ目がなかったからです。ほんとになかったよねえ。ワインの切れ目も収入も。



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 デザートは二種。でも何だったか覚えていません。たぶん嫌いじゃなかったので覚えてないのでしょう。


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 このホテルでは詳しいメニューを渡してくれません。
 「料理が供されるときに、驚きがあるように」とのことで、それはいいんですけど、こちらは完全に酔っぱらってますから、あとから思い出す手がかりがないのはちょっと残念です。



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 さいごにとどめの一撃。おフランスの酒精強化ワインだそうです。
 麦わら色がとてもきれい。甘いのもたまにはいいねえ。
 二種のシャンパンで下地ができていた上に、出された八種のお酒はすべて味わい(ところどころ宿六は二杯ずつ味わい)、それでもなんとか自力で部屋に戻ります。



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 念のため付き添ってくれたホテルの人が(これは当然、部屋に辿り着けない人もいるでしょう…)、部屋の前でさっと渡してくれたのは…
 茶飯のおむすび。ワインのあとでお米。ワインたっぷりのあとでおむすび!やはりここは日本国!


 2019年のデータによりますと、日本人ひとりあたりの年間の米消費量は、50キロだそうです。
 90年代前半と比べて、20キロ近く減ったことになります。
 いっぽう、私がつねづね「異様なほど大量にお米を食べる人々」だと思っているペルー人は、2017年に65キロに達したそうです。


 しかしですね、2000年代はじめまではこの数字が逆で、日本が60キロ台、ペルーが50キロ台だったという恐るべき事実!
 ずっと昔からペルー人のほうが、日本人よりはるかに大量のお米を食べている、と思い込んでいました!ちょっとびっくり!


 この晩はとりあえずバッタリ倒れて眠り込み、私だけ明け方に這い出してお湯に入り、それからまた倒れ込みました。
 文句のつけようのない誕生日再祝いでした。


旅はつづく。
(このホテルに居続けなら、ずーっとつづいてもいいな…)


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