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オリーブ、ザクロ、ナツメヤシ...


パチャカマックの庭の木々




2022年8月26日(金) 午時6時半の室温19.7℃ 外気温15.9℃ 曇り、ときどき霧雨
(きょうは最低15.2℃、最高16.3℃、湿度80%…終日冷水につかっているような寒さです。ブルブルブル…)


<どんぐりのない国ペルー>



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 当地ペルーでは、どんぐりがなる木…つまりブナ科の樹木は、ぜんぜん見かけませんね。秋にどんぐりがないって、かなり寂しいものですよ…
 もっと南のチリやアルゼンチンには、欧米原産のオークが導入されていますが、ペルーにはありません。少なくとも私が知る限り。(またブナ科とは別に、南極ブナ科というのがあり、チリとアルゼンチンに自生しているそうですが、それもペルーにはありません)


 今まで誰も持ち込もうとは、しなかったのでしょうか?
 どんぐり王国エストレマドゥーラ出身の、ペルー征服者さまご一行とその家族が、家畜飼料になるオーク類の移植を試みなかったとは、思えません。ということは、やはりペルーでは気候が合わずうまくいかなかった、と考えるのが自然かもしれません。


 ただ材木屋さんの世界には、ペルーオーク(roble peruanoまたはroble criollo)なるものがあり、もしや?…と色めき立って調べましたが、ぜんぜん違うマメ科の木でした。がっかり…
 ペルーオークなんて呼ぶのは、ほぼ詐欺と思いますが、たぶん悪いのはペルー人じゃないですね。名付け下手なヨーロッパ人が、いかにもつけそうな安易な呼び名ですから。例の「丸いものはなんでもリンゴ」的な、彼ら独特の命名法ですね。



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コナラらしきどんぐりの発芽@Lima


 私があまりどんぐりどんぐりと懐かしがるので、十年前に帰郷した際、pacollamaさんがお手ずから拾った野尻湖のどんぐりを下さいました(左の写真)
 私はそれを、なぜか間違えてリマまで持ち帰ってしまいました。おっかしいなー?スーツケース四つの大荷物だったから、うっかり紛れこんだのかな?ふしぎですねオホホホホ…
 そして、そのうち二種は、うまく発芽まで持っていくことができました。


 (なおpacollamaさんご自身は、どんぐりを「日本国内で移動させただけ」ですので、違法性ゼロです、念のため!)


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ウバメガシらしきどんぐりの発芽@Lima


 こんな風に、元気そうな葉っぱも広げていい感じでしたが、じめじめ寒い冬の終りごろ、急にぷしゅー…っと弱って枯れてしまいました。
 気候が違いすぎて合わなかったのですね。でもリマで懐かしい葉っぱが見られただけでも、とても嬉しかったです。



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元おつまみ用銀杏の発芽@Lima


 ついでながら、同年、やはり荷物に紛れていた元おつまみ用銀杏は、一本だけ生き残って、それを昨年庭におろしてやりました。
 イチョウは赤道界隈では育たないとされていますが、ゆっくりゆっくり育っており、今やっと70センチくらいです。秋にはいちおう、控えめにちょっとだけ黄葉もしてくれます。


 さすが数々の気候変動を乗り越え、二億年も姿を変えずにやってきたイチョウです!リマのこのへんな気候を、もう十年も生き延びているとは。
 (なお例のVivero Los Inkasで、1メートル弱のイチョウ苗を、1万6千円くらいで売っているのを見たことがあります。最近は品切れだそうですが)



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どんぐり大国どんぐり地方のどんぐり林。
(古都トルヒーヨを背にした男性と、立ち去っていく男性…
映画の最終場面みたいで気に入ってます)


 そんなこんなで、ひっそりと幕を閉じた、第一回どんぐりチャレンジでしたが…
 2019年初夏。どんぐり大国のどんぐり地方(スペインのエストレマドゥーラ地方)に行く機会に恵まれました。
 そしてそこらじゅうが、どんぐりの木だらけ…正確にはセイヨウヒイラギガシ(Quercus ilex)だらけなのを目にして、どんぐりへの思いが再燃!


 (セイヨウヒイラギガシはまどろっこしいので、以下スペイン式にエンシーナencinaと呼びます)


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エンシーナの木陰で涼む羊たち


 でも初夏ですから、どんぐりは影も形もありません。
 エンシーナにつきもののイベリア豚も、放牧(montanera)の時期ではないため、ぜんぜん見かけませんでした。



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モンテアラゴンの古城&放棄された修道院
Castillo y abadia de Montearagon, Huesca


 しかし嬉しいことに、この年は思いがけずもう一度、スペインに行くことになりました。
 (宿六は、翌年以降のはやり病をうっすら予知していた?のか、珍しく自分から「行けるときに行っとこう」と提案してくれました。どんなことも私が言い出しっぺとなるわが家では、非常に珍しい出来事でした)


 ただ今度は今度で、ちょっと晩秋すぎて、返ってどんぐり採集はむずかしそうです。
 それでもオーク類に目を光らせつつ各地をまわるうち、北部ウエスカ近郊のモンテアラゴンで、ついにどんぐり満載の樫の木を見つけました!
 場所がまたいいのですよね、アラゴン王家発祥の地とされる、荒れ果てた古城のあしもとですから。大きな風景の中の、大きな寂しさ、たまりません。幽霊もうじゃうじゃ出そうで最高です。



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 どんぐりは、おいしそうな良い色に熟して、さわるだけでぽろぽろっと地面に落ちます。採集にはちょうど良い状態です。

 スペインにはいろんな樫の木があり、見分けがむずかしいですが、どんぐりの帽子(殻斗)と葉っぱの形から、たぶんエンシーナ君と思われます。
 南の放牧地デエサの印象が強い木ですが、じっさいにはイベリア半島のほぼ全域で育っているそうです。だからこんな北でも出会えたのですね。



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 日本人的には、何でもないはずのこの情景ですが…
 どんぐりのない国からやってきた私にとっては、低血圧が一時的に治ってしまうくらいの、大感動の眺めです。



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黙々と使命を果たす(=どんぐりを集める)宿六…
巳年の巳月生まれはいつもこれだよ…


 こういうとき、もそっと宿六のテンションも上がって、「良かった良かった良かったね!」と、少しいっしょに騒いでくれるといいのですけどね。
 誰もいない、静まり返った古城の下で、私ひとりが大喜びして騒ぎ歩くという、いつもの状況となりました。
 私が口をつぐむと、あたりはしーーーーん…となります。すこーし空しい。



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2022年2月の
モンテアラゴンの王子たち(上列の鉢)
Los infantes de Montearagon


 さてこのスペインのどんぐりも、リマに帰着してみると、どういうわけかスーツケースに忍び込んでおり、「そこまでして南米が見たかったのね!」とかわいそうになったので、蒔いてやることにしました。
 新大陸発見に深く関わったアラゴン王家の関係者ですから、ペルー再征服を狙っているのやもしれません。


 前回のどんぐりチャレンジでは、こちらの秋に発芽させたのが、いちばんの失敗要因だったと思います。
 そこで今回は、一か月だけ冷蔵庫で寝かせたあと、夏の盛りの1月はじめに植えました。そして早くも1月30日に、さいしょの葉っぱを確認!
 以来ほぼ二年半、ゆっくりですが着実に育っています。


 葉のふちには、さわると痛い棘があり、たしかに学名や和名通りでヒイラギそっくりです。
 昨夏は十数本の苗を、大きな鉢に一本ずつ植えかえたところ、また急にプラス5センチほど伸びました。エンシーナ君は、北アフリカにも分布しているので、冬らしい冬のないリマでやっていける可能性、けっこう大きいかもしれません。常緑なのも、リマには向いていると思います。


 …常緑も常緑、見ていると季節をまったく問わず、今ごろの「リマの真冬」にも若葉を出したりします。
 かえってそのせいで、根が伸びるのが遅くなり、全体の育ちがゆっくりなのかもしれません。スペインではエンシーナは、葉の成長がとまる冬に根が伸びる、と聞きましたので。



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まだ樹高はたったの
22センチメートル!
隣のコヤチャが大きく見えまーす!


 この冬は、どんぐり苗のうち三本を、おそるおそる地植えにしました。中でも育ちがいい一本は、新バラ園の一角に。

 どんぐりなんて、もちろん見たことも聞いたこともないベンハー君に、「どんぐりは豚の良い飼料で…」という話をしたところ、目がキラキラと輝き始めました。
 「いずれそのベジョータ(どんぐり)で仔豚を育てて、パチャマンカにしたら、さぞうまいでしょうね!」
 うんうん、たしかに。でも我々があと百年は生きないと、むずかしいかな?



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スペインのどんぐりハム


 エンシーナ君のどんぐりは、なんといってもこれ↑の、いわば原々材料ですしねえ…
 でも私は、今のところどんぐり収穫までは高望みしていません。まずはエンシーナ君に、このまま気楽に、青々と茂っていってほしいだけです。


 庭にはイトスギ、マグノリア、ナツメヤシ、オリーブ、ぶどう、ペルペトゥア(カレープラント)、ラベンダー、サントリーナなど、スペインの思い出につながる植物を集めてますので、ぜひその一員に加わってほしいです。


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 なんて書いてるだけで、改めてスペインが懐かしくなり、2019年の写真を見直しますと…
 トルヒーヨ郊外のオズボーン牛のまわりも、エンシーナ君ばかりだったようです。多すぎて、いちいち気づいていませんでした。
 うちのエンシーナ君も、私が生きてるあいだに、右の若木くらいには育つかな?


 さいきんはもう、このままずるずるアホな地球に留まる理由が、ほとんど見つからなくて困っていますが、ただただ庭と動物たちだけが私をガシっと引き止めている、という気がします。


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スペインの放牧地、デエサの眺め(夏)。
手前でエンシーナの若木が育っていますね!


 エンシーナ君は、スペイン南西部の放牧地「デエサ」の、真の主役です。
 デエサは、かつてイベリア半島を覆っていた暗い原生林に、人々が千年ばかし手を加えつづけ、だいじに維持している放牧地です。草はらに大きな木々が点在する、森といっても明るい眺めが特徴です。
 ここではどんぐりの収穫量をふやすため、エンシーナを剪定するので、自然樹形とは違う、こういう平たい姿になるようです。



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コルクガシ(Quercus suber)のデエサ


 おまけ。
 エンシーナに次いで、デエサでよく見る樹木はコルク樫です。コルク材料にするため厚い皮をはいだところが、鮮やかなオレンジ色に見えています
 コルク樫のどんぐりも豚の飼料ですが、エンシーナ君のどんぐりのほうが、蛋白質・炭水化物ともにずっと多いとか。
 そのため、エンシーナのデエサで育った豚のほうが、おいしくて上等なのだそうです。




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ピレネーオーク(Quercus pyrenaica)のデエサ


 どんぐり系では、ざっくりロブレrobleと呼ばれるカシワの親戚君も、トルヒーヨ周辺のデエサでたくさん見かけました。
 これはたぶんピレネーオークです。



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 ロブレは、カシワより切れ込みが深い葉の形が、なんとも美しく、「ヨーロッパー!」という感じがしまして…


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12月はじめのピレネーオーク。
もうどんぐりはほとんど見つかりませんでした。


 また秋には、おちついた黄色に変わるので、一本うちにもほしいなあと、あこがれておりますが…
 スペインでの分布は、エンシーナよりずっと北寄りですから、リマの気候ではおそらく順応は難しいでしょうね。
 たとえ順応できたとしても、冷え込みが足りなくて、ほとんど黄葉しないと思いますし。



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寂しくも美しいピレネーオークの黄葉
(Castillo de Zafra, Guadalajara)


 19年晩秋の旅で、たまたま見つかったどんぐりが、環境順応力が高いエンシーナ君で、本当に良かったと思います。
 ぜひ末永くつきあっていきたいです。葉もとても硬いですから、たぶんあの貪欲なアルパカたちも、ちょっと食えないでしょうし!



2021年9月22日(水) 午前11時の室温20.7℃ 外気温18.8℃ 明るい曇り、もうすぐ晴れそう
<オリーブ君、とうとう婿入り>



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 4月にイサベル奥さんの園芸店(の裏庭)で、取り置きしてもらった二本のオリーブの木。前の土曜に、やっと引き取って来れました。
 新芽が動き出す前の7月ごろが良かったのですが、庭師さん交代のいろいろで遅くなりました。でも強い木なので大丈夫でしょう!


 オリーブは木質がつまっていて重いので、店主のイサベルさんに運び手探しを依頼しましたが、結局当日までひとりも見つからずじまい…
 昔と違っていまどきのリマっ子労働者は、数時間だけの小さな仕事には見向きもしないので、仕方ありません。


 でもうちの新しい庭師ベンハー君が、従弟をひとり捕まえてきてくれたので、ともかく現場に向かいます。
 が!…オリーブ二本は、きちんと掘り出してすらない状態でした。何日も前から予告しておいたのに、おいおいおい…
 イサベルさんはもう何度も、オリーブ購入希望者にすっぽかされたそうなので、今回も疑っていたのかもしれませんね。



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重いオリーブ樹と格闘するベンハー君


 (あいかわらずとっちらかったイサベルさんの園芸店。オリーブが見辛いので、背景ボカしました)


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 イサベルさんの店の、やる気ゼロの従業員にもお気持ちだけ手伝って頂き、小さいほうのオリーブはなんとか掘り出せました。
 でもこれを、たった三人…いえ二人半でトラックに積み込むのは、ぜったい無理です。



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 と、そこに救世主登場!
 到着したトラック運転手さんが、「今日はたまたま」あと二人、身内を乗っけてきていたのです。しかも全員「短時間ならつきあえる」と言うので、6人総がかりで、二本のオリーブをトラックに積み込みます。
 どうも思っていたより、はるかにオオゴトになっています。まあペルーでは、いつでもなんでも「思ってたよりオオゴト」になるんですけど。



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 うちへ到着したあと、別の大問題が判明しました。トラックが大きすぎて門をくぐれませーん!
 だからここで下ろして、裏庭まで人力で運ばなくてはなりません。
 6人分の深いためいきが、心に重く響くので、私は遠巻きに望遠レンズで観察中。



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物見高いアルパカたちも馳せ参じます。
チャスキ 「なんだなんだ!なんの騒ぎだ?!」
チャスカ 「アルパカ飼料の搬入じゃないの?」



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 アルパカ阻止柵の狭い扉は、ぎりっぎりで通過できました!あー良かった。
 オリーブはいちばん重い根のところが、横へ横へと広がっているので、あとちょっとでも大きかったら難しかったと思います。



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チャスカ
「あら…アルパカ飼料じゃあないみたいね…」



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チャスキ
「なんだ、食べられないオリーブじゃないか!
こういうものを勝手に持ち込まれては困る!」


 一息ついてるおじさんたちが、さりげなくカメラ目線なのがかわいいです。


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「わっせわっせ、わっせわっせ…」


 (※ただいま画面がたいへん重くなっております。回復まで少々お待ちください)


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 事前に掘った穴はいくぶん小さかったので、その近くにオリーブを横たえてもらいます。
 重荷を降ろしたおじさんたちに、「思ってたより大きな樹で私もびっくり!重いのを運んでくれてありがとう!」とお礼を言うと、中のひとりがいらん冗談で返してよこしました、「チーノス(アジア人)は、大抵ものが小さく見えるようですね」と。
 つまり、アジア人の細く小さな目を揶揄しているわけで、そのおじさん、直後にイサベルさんからバシっと肘鉄をくらったのは、いい気味でした…


 いえ私も、もう今さらこの手の冗談には腹すら立たず、ただ呆れて小さなため息をつく…のみですが、しかしそうは言ってもですねえ、私よりずっと目が細いおじさんにそういうこと言われると、ちょっとねえ…(笑)
 そこで、「まず鏡見れば?」と言いたいのは抑えて、代わりに静かーな声で、「今はいろいろ世の中むずかしいから、そういう冗談はあまりよくないかもね?」とだけつぶやいておきました。
 おじさんは少し反省したらしく、あとはせっせと庭を褒めまくってくれました。ペルーの人のこのわかりやすさは、私はつねづね高く評価しております。



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「もしや新居はここですか?
お宅のコンポストうまそうだし、
まわりが芝で私の姿も引き立ちますね!」


 あとはスタスタ歩いて、じぶんで穴に入ってくれそう……な、ミツガシラノオリーブ(三ツ頭之阿利布)君。


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 さーて二本目に参ります。こちらはもっと長くて重くて、あまりの重さについ笑ってしまう皆さん。「クッソ重いな!!(Pesa como mi***a !!)」とかボヤいています。
 こういういかにも海岸部らしい、典雅なおことば遣いを耳にするのも、思えばずいぶん久しぶりです。
 アンデスびとのベンハー君はもちろん、先代庭師の永吉君も、この手の優にやさしい罵倒語は(少なくとも私の前では)言わない人でしたので。


 (…永吉君のみやびやかなおことば遣いというと、犬のフンのことを「グラシア」と呼ぶのが、なんか好きでしたね。
 グラシアのもとの意味「恩寵」が、「迷惑なものごと」の意に変わったらしく、「隣の犬がうちの前に、たっぷり『恩寵』を落していきました!」とかよく言っていました)



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「ヨッコラショ、エッコラショ、ヨッコラショ…」
みなさん苦しそうで、聖像行列みたいです。


 (※ふたたび画面がたいへん重くなっております、今しばらく御辛抱ください)


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 重すぎる聖像を運ぶ、こんな情景がふと頭をよぎります…
 (2006年6月、リマ版コイユル・リティ祭にて。クスコの聖セバスティアン信徒会のみなさん、ちょっと危なかったですがご無事でなにより!)


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「ヨッコラショ、エッコラショ…」

チャスキ 「なんだなんだ、また来たぞ?!」
チャスカ 「今度こそアルパカ飼料の搬入でしょ?」



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「ありがたい、終った…」と
全員思っていたに違いない、この瞬間。


 こうして二本目のオリーブも、無事に設置場所に到着しました。
 おじさんたちには少々のお礼、飛び入りの三人分として100ソルと、ジュースとパネトン四分の一ずつをお出しして、たいへん喜んでお帰りいただきました。


 こういうとき、水一杯出さない上に、お礼のひとことも言わないのがリマでは普通です。手間賃払ってるんだから、ということなんでしょうね。
 それも一理あるとは思いますが、植樹はおめでたいお祭なので、気持ちだけでも何かお出ししたいですよね。(まあほんとはベンハー君と従弟君に、丸々一個ずつあげたかったパネトンですが、今回のところは全員に行き渡って良かったです)


 まるで約束してあったみたいに、絶妙のタイミングで忽然と登場してくれた、このおじさんたち。
 もしかすると、太めの…かなり太めのオリーブ古木の、妖精…だったのかもしれません。



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 あとはベンハー君と従弟君だけが残って、てきぱきと植え付けます。
 詳しくは後日ご紹介しますが、新人ベンハー君の仕事の早さと丁寧さは、先代永吉君のだいたい8.5倍くらいです。
 おかげで庭が、急速にほんとの庭らしくなってきています。



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 こちらの大きなほうのオリーブは、太い根に枯れ込みがあったので、それを従弟君が削り取っています。
 根を切ったぶん、バランスを取らないといけないので、私は手早く枝葉を刈り込みます。あ、チャスカがさっそく、切った葉に目をつけましたね…



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 自家製コンポストをたっぷり入れて、植え付け完了!
 …あれ?うしろのアルパカたち、剪定したオリーブの葉を調べているような…?



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…ちょっとチャスカ!
あんた何食べてるの?!


 剪定したオリーブの葉を、枝ごとむしゃむしゃ味見し始めたチャスカ。オリーブは(あまり)食べないと思っていましたが、もしや急に好きになってしまったんでしょうか?
 うっすらといやな予感がしますね……



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 アルパカたちの監視下、ミツガシラノオリーブ君も植え付けます。
 こちらのオリーブは、根がきちんとコモ巻きされて守られていたので、すぐ根付きそうで安心です。



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 これも二人がかりで、エイヤっと植え付けます。
 おや、アルパカたちが、そそくさと向こうに去っていきます、どうしたのかな…なんかあやしいな…



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 アルパカを追っていくと……あーっ!
 今度は落ちた葉じゃなくて、植えたてのオリーブ樹から直接はっぱをむしって、ムシャムシャやっています!…鬼っ!悪魔っ!!
 ひこばえを齧り取ってくれるのは、むしろありがたいくらいですが、上のほうはやめてほしい…大丈夫かなあ…これ以上柵は作りたくないぞ…



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「やっぱりアルパカ飼料搬入だったのね!
それもこんなに新鮮で大容量のアルパカ飼料…
チャスカ大満足……」



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 今はとりあえず、アルパカに食われるくらいなら…と、もっと枝葉を落とすことにしました。
 だんだんとアルパカの口が届かないところに、葉を茂らせていきましょう。


 そうしたら発見がありました。荒々しくグイっとしなった樹形かと思ったら、ほんとは大小二本がそっと寄り添った形だったのですね。
 それぞれ短い枝を、腕のように相手にかけているところもかわいいです、アイオイノオリーブ(相生之阿利布)君ですね。


 いずれしっかり根付いたら、この見苦しい青い癒合剤は、ぜひとも落とします。
 当地で癒合剤というと必ずこの青いのが出てきますが、何が悲しゅうてこんな色にしたのでしょう…これと比べると、日本の癒合剤「トップジン」のすごいオレンジ色すら地味に見えてきます。
 前に寒緋桜を大々的に剪定したときも、変な青色いやさに木工用ボンドで代用し、うまくいきました。オリーブもそれでいきます。



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 ミツガシラノオリーブ君も、枝葉をたっぷり落しました、おありがたくもアルパカたちが手伝ってくれました…。あとはしばらく様子見です。
 そして昨晩、ソーラー照明とベンチをオリーブの前にすえつけました。おりしも満月、よいお月見ができました。


 今後この二本のオリーブからは、目を離さずしっかり手入れして、できるだけ早く太らせたいです。
 成長に年月がかかるオリーブも、まめに剪定して水と肥料をきちんと入れると、意外にもけっこう促成栽培できるらしいですので。
 もっともアルパカたちは、余計なお世話などしてくれないことを祈りますが、よく気のつくベンハー君が目を光らせているので、きっと大丈夫です。



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チャスキ 「僕とオリーブ、どっちがきれい?」
チャスカ 「私に決まってるでしょ!」


 夏に向けて銀色の葉がふさって来たら、またご報告いたします。


<おまけのオリーブ写真集>


 リマのオリーブ

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2017年10月
リマ市サン・イシードロ区の、名高いオリーブ公園で。



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 この公園は、10ヘクタールの土地に1700本近いオリーブが植えられていて、実に壮観です。
 若い木も多いですけど、こういう立派に樹皮がのたくった古木もまた、たくさんあります。


 1560年、スペインはセビーリャから初めてペルーにオリーブの枝が持ち込まれ、その後どうやって各地に広まったか…というお話は、インカ・ガルシラソが面白おかしく描いていますが、まさにその最初のオリーブが挿し木されたのが、ここだったようです。
 今もその樹が生き残っているのか?は、ざっと調べてもはっきりしませんでしたが、少なくとも聖マルティン・デ・ポーレスが1637年に植えたオリーブは、近年特定されたそうですね。つまり380歳を超えるオリーブ、ということです。


 (ただスペインの樹齢推定法を使ったらしく、果たしてそれが温暖なリマ育ちのオリーブにもあてはまるのか、そのへんはかなり疑問に思っております)


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 春の陽気にさそわれてふらっと散歩に行ったら、ちょうどスプリンクラー散布が始まりました!


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 上天気の日に、オリーブの足元に白い霧がまつわりついて…
 夢で見た景色のような、あるいは夢幻劇の舞台のような、おもしろい眺めです。



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 ここは90年代にはかなり荒れた公園で、長年剪定されずに弱った古木に、色鮮やかなナスタチュームばかりが元気に絡まって、それはそれで風情がありました。
 でも近年は、きちんと剪定して肥料も施しているそうで、豊作年には15トンも実がとれるようになったそうです。


 むかしこの界隈では、ずいぶん物件探しをしました。でも当時からお値段の桁がちがう特等地でしたので、もちろんご縁はありませんでした。
 今はパチャカマックがとても気に入っていますけど、もしあのころ、無理(すごい無理)をしてオリーブ公園に住まいを得ていたら、いまごろは300歳、400歳のオリーブ古木の収穫の分け前を頂けていたはずで……それだけは想像するとちょっと残念です!



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 ほとんどの木はスペイン風に、低く刈り込んで太らせてありますが、中にはこんな昇り竜めいた木もあります!お見事!

 アレキーパのオリーブ

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 2012年9月、ナスカのもっと南のヤウカにて。
 このあたりでも、植民地時代のうんと早い時期に、オリーブが植え付けられたそうです。



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 (今はどうかわかりませんが)、当時のヤウカのオリーブは自然樹形で…と言えば聞こえはいいですが、要はほぼほったらかしの、鬱蒼たる高木に育っていました。
 そこに、スペインの明るいオリーブ林とはぜんぜん違う味があり、とても印象深かったので、(…という理由後付けで)うちの既存の四本も、伸び放題にしてあります。
 オリーブは自然状態では、いったいどこまで背が伸びるのでしょうね??



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 ヤウカのもっと先、アティキーパのオリーブ林。
 湿気の多いロマス(冬の沙漠の花園)にすっぽりと包み込まれていましたが、数百年もののオリーブたち、元気そうでした。



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 アティキーパのオリーブ農家で分けてもらった、しぼりたてのオリーブオイルは、記憶に残るおいしさでした。
 品種や育て方も大切でしょうけれど、やはりこういうものは、新鮮さがいちばんの味かもしれませんね。


 スペインのオリーブ

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2019年6月、オロペサ郊外


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同年同月、グアダルーペ郊外


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同じくグアダルーペ郊外


 もういっくらでもいい木がありますねえ!
 スペインでは数百年もののオリーブでも、「自分で掘って持ってくなら、タダであげてもいいよ」なーんてことがよくあるそうですね。
 掘って持ってく部分がものすごく大変なのは、よくわかりましたが、それにしても羨ましいです。まあそのかわりスペインでは、1万円でアルパカ一頭は買えないでしょうけど…



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同年同月、ナバルビリャル・デ・イボールあたり。
「今生で見たオリーブ樹の総数」が、ここで激増!



2021年6月14日(月) 午後5時の室温21.3℃ 外気温19.7℃ ひさびさの快晴!のち曇り
<白花ザクロの「大豊作」>



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 例の香港発・謎のタネから育った白花ザクロの、初めての実を収穫いたしました。
 今年はたった一個、それもわずか4センチの実しかつきませんでしたが…



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 割ってみると、ちゃんといっちょまえに、大きな実が詰まっています。


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「なーんだ植物性か…」


 50粒しかない実を、宿六と分けて大事に味見しました。
 酸味はなくてとても甘く、手持ちの二種とはまったく別の風味です、嬉し!
 中国系の三白ザクロと推測してましたけど、皮がやわらかく、中味のピンクもかなり濃いので、ちがうかもしれません。
 タネの硬さも、先日のペルシャの赤ザクロほどではありませんが、じゅうぶんやわらかくて気になりません。



 同じ特徴のザクロを探して、ペルシャの白ザクロ(Anaar Yazd、ヤズドのザクロ)というのに辿り着きました、少なくとも写真の実の色はそっくり。
 品種名のヤズドは、イランのまんなかあたりの、拝火教徒が鳥葬に使った塔で有名なところ……なんかいいですねえ。


 イランだけでもザクロは740種もある由ですから、これもとりあえずペルシャ系、ということにしておいても許される?かな。
 そりゃ中国よりは、ペルシャと言ったほうがもっとザクロらしくて、風情もありますし。


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 さてこの写真は、香港発の自称「トルコの巨大ザクロのタネ」の、広告と領収書です。トルコのザクロというより、ヤミ鍋式タネだったわけですが。

 15粒で1.99ドル、ペルーまでの送料が2.19ドル。
 計約4ドルの大投資でしたが、これで半生楽しめそうです、おかげですでに二回も、ペルシャ旅行に出かけた気分です。
 さあて次は、このタネたち、私をどこに連れていってくれるでしょうね…



2021年6月12日(土) 午後7時半の室温20.8℃ 外気温18.4℃ 終日曇り&霧雨
<オリーブ樹が向こうから歩いてきた話>



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 庭にぜひ一本、太いオリーブの木がほしい…と、長いこと思いつづけています。
 うちの四本のオリーブは、どこまで高く育つか知りたくて放置してあるので、スペイン式に低く刈り込んで育てたオリーブも、ぜひ一本ほしいのですね。
 でもなかなかご縁がなかったのですが…
 この夏、園芸店がずらっと並ぶご近所に、とつぜんこんな大きなオリーブ樹が現れ、びっくり仰天!


 左手は、顔なじみのイサベル奥さんの園芸店なので、事情を聞いてみますと…
 イサベルさんが敷地の半分を、オリーブ古木専門店に貸したのだそうです。



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「こっちだニャ!」


 イサベル奥さんの猫、マリシエロ(「海と空」)嬢が、オリーブ屋さんの領分を案内してくれます。


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 さまざまな太さのオリーブが、無造作に展示…というか放り出してあります。
 あけっぱなしの土地ですが、コモで巻いた苗はどれも非常に重いので、盗まれる心配はなさそうです。



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 このオリーブ専門店は、ピスコに本拠地があり、写真のようなご立派なオリーブの在庫をたくさん持っているのだそうです。これは魅惑的ですねえ…
 ただ古木といっても、樹齢は70歳〜80歳止まりだそうです。
 その割には、幹がみごとにのたくっているような気がしますが、ペルー海岸部の温暖な気候のおかげで、成長が早いのかもしれませんね。



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このオリーブ、永遠に売れずに
ずーっとここにあるといいなあ…


 店の正面に、看板代わりに植えられたこの大きなオリーブも、だいたい70年ものだそうです。
 そしてお値段は…ななななんと3200ドル!で、運搬&植え付け手数料は別途とのこと。
 いやいや、いやいやさすがにこれは、木の価格ではないですね…


 この専門店では、直径の太さで自動的に値段が決まる由です、すなわち1インチ(2.54p)あたり150ドル、なのだそうで。
 それもちょっと気になりますね、わずか8年前に植えたうちのオリーブですら、すでに7インチの太さがあるので、単純に直径だけでは価値は決められないと思います。


 それにここで初めて気づいたのですが、これくらいの太さ大きさとなると、もはやクレーンなしでは植え付け不可能だそうです。
 アルパカ様のおかげで柵だらけのわが家には、もうクレーン車は絶対的に入れませんから、どっちにしてももっと若い木しか無理なようです。


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 たとえば樹齢20年ほどの、これくらいの木だったら、なんとか人力で運んで植え付けできるそうです。
 でも、手前の太いのは直径8インチはありますから、ということは自動的に1200ドルですか……うーーーんまだまだあまりに高いなあ。


 もちろんどの木も、いかにも専門店らしく、すっきり手入れはされています。
 でも(勝手に見せてもらって批判するのも申し訳ないけど)、教科書通りの手入れのせいで、かえってこう何か、ドゥエンデ(精霊)のようなものが逃げてしまったような…気がしてしまいます。



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3200ドル也のオリーブで
悠々と爪とぎするマリシエロ嬢



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「今度はあっちだニャ!」


 せっかくうちのすぐ近く、車で三分のところまで、オリーブ専門店のほうから来てくれたのに、そこでもピンとくる&手の届く木は見つからないのかあ…
 と、少しがっかりしていると、そこにお隣の園芸店のイサベルさんが戻ってきました。
 そして、「私もけっこう太いオリーブ、持ってるんですけど、もう見ました?」と言うので、さっそくマリシエロに案内してもらいます。



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 すると敷地のいちばん奥の、肥料が積み上げられ、作業着など干してあるところに、12本のオリーブが植えてあります。
 すべてプクサーナのあるお屋敷から、半年ほど前に引き取ってきたオリーブだそうです。
 (プクサーナには大きなオリーブ園があり、さいきん別荘地として切り売りされているので、そのへんでしょう)


 樹齢はわかりませんが、たぶん20年はたっているはず、とのことです。
 中でも、この木とばっちり、目が合ってしまいました。
 根元の直径は11インチとけっこう太いですし、幹もきれいに三本に分かれているので、手入れをすればゆくゆく絵になるオリーブに変身してくれそうです。



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 またこちらの木も、今はひこばえだらけでボウボウですが、高いところまでよく太っていて、良い意味で荒々しい生命力を感じます。
 上のほうを少し切って、太木ざしにして、ちゃっかりもう一本確保…なんていうのもおもしろいかもしれませんし。


 ただ、おとなりの専門店の相場で考えますと、それぞれ1600ドルと1200ドル相当なので、おそるおそるイサベルさんにたずねてみますと…
 「えーっとそうですね、1500と1200くらいかな」
 「…それ、米ドルですか?」
 「まさか!ペルーソルですよ」


 おお!それだったらおとなりの、約四分の一ではないですか!
 さきほどから、なぜか薄暗い顔で私につきそっていた宿六も、急に元気&乗り気になったので、さっそく取り置きをお願いしておきました。
 いちばん寒い7月ごろの移植が良いそうですから、もうしばらくしたら嬉しく引き取りに行こうと思います。



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「太いオリーブもいいけど、
ひとつ2ソルの多肉植物も
いかが?」とマリシエロ。



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 こちらはイサベルさんのところから二軒先の、別の園芸店のハンサム猫さん。このあたりは陽気な茶トラが多いです。
 うちにはいない色柄が楽しくて可愛くて、つい触りまくってしまい、帰宅してからハスミニに「浮気したでしょ?」と叱られました。



<ペルシャのザクロが勝手に生えてきた話>



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 2016年に香港から取り寄せた、いちおう「トルコ産巨大ザクロ」と称する、謎多きタネ。
 そこから育った7,8本の苗のうち、一本が水晶ザクロ(白い花のザクロ、ペルーでは入手できない品種)とわかって大喜びした、というお話を、昨年みなさまにいたしました。


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 そしてこの秋、次なる一本が待望の実をつけたのですが、今度はなんと、ペルシャ系とおぼしき珍しいザクロだったことが判明いたしました!!
 私めはもう、欣喜雀躍状態です!



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 左は、うちにもともとあるザクロ。400〜500グラムの、みずみずしくて甘酸っぱい大きな実をつけます。
 そして右が、初めて収穫したペルシャザクロ?の実。ふたまわりほど小さくて、まだ実が小さなうちから鮮やかな深紅色でした。


 中の実も、右の写真のようにまったく違います。
 うちのザクロもじゅうぶんおいしいのですが、今度のザクロの別格のおいしさには、大げさではなく圧倒されました。
 黒サクランボ風味の赤ワインみたいな、ほどよい苦みと甘みのある複雑な味で、その上タネがやわらかく、まったく食べる邪魔になりません。


 こんなザクロ、生まれて初めてです。


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 その特徴から調べたところ、イランのMalasか、イスラエルのShaniという品種が近そうです。
 (イスラエルは行ったことがあるけど、イランは未踏のあこがれの地なので、ここはイラン種ということにしておきたい…)


 水晶ザクロ同様、少なくとも私が知る限り、ペルーにはない品種のはずです。
 (チリでは近年、Shani種を植えているらしいので、近々ペルーにも生果が輸入されるようになるかもしれませんが。そうなるといいな)
 今年は数個しかつきませんでしたが、あのおいしさを山ほど味わうことを夢見て、いま欲張って何本も挿し木を試しています。うまく根付いてくれますように!


 …しかしですね、あの香港のタネは、ほんといったいなんだったのでしょうね。
 売り手はとうの昔に廃業してしまい、連絡がとれないのが残念ですが、いろんな品種のザクロをあれこれ食べて、残ったタネを適当に詰めて送ってきたのかなあ…
 きっと最終的には、「トルコの巨大ザクロ」だけは入ってなかったね、というオチになりそうな予感がしております。


 私があと欲しいのは、やはりイランの、美しい黒ザクロなんですけど、それも一本混じってないかなあ?…と、一応言っておこう…
 まだ結実していない苗が5,6本残っていますから、とうぶんは秋ごとにスリルを楽しめそうです。



2020年10月29日(木) 午後6時の室温24.9℃ 外気温20.3℃ 快晴!のち曇り
<水晶ザクロが勝手に生えてきた話>



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柘榴の朱色の世界に文字通り
没頭するチャムネエメラルドハチドリさん


 先週、柘榴の品種を調べていて、ほとんど無色透明の実がつく、きれいな水晶柘榴の話を読みました。
 花も実も皮もすべて白っぽいので、三白柘榴とも呼ばれるようです。
 これは…と思い、すぐネットで探しましたが、ペルーでは苗もタネも入手できないようです。
 そこで、「ああ残念…でもいつかきれいな白い柘榴、手に入れたいなあ!」と大声で言って、そのまま忘れたのでしたが…



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幻覚かと思った…


 それからきっかり三日後…
 なんとなんと!庭の壁ぎわの、ふだんろくに見もしなかった柘榴の苗が、白い花を二つ三つ、つけているのを発見してしまいました!
 この花の色、写真で見た水晶柘榴そのものです。でも白柘榴を植えた覚えは、まったくありません、なのにいったいどうしてこんなことが?!



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チャスカもびっくり白柘榴


 うちの庭はもともと、柘榴だらけです。
 ざっと数十本のミチカザクロの生け垣や、鉢植えを移植したものや、そこからの取り木や実生苗…と、数えきれませんが、すべて赤い花が咲く品種です。


 でもほかに、2016年に取り寄せたタネからの苗が、たしか7,8本あります。
 「特別に大きな実がつくトルコの品種(花は朱色)」というふれこみでしたが、果樹をタネから育てても、親と同じものが出てくるとは限りませんから、まあおもしろ半分で蒔いたのでした。
 じっさい、芽吹いたものは育つ早さも棘のつきかたもまちまちで、庭のあちこちに植えたまますっかり忘れて、今に至っておりました。


 改めてよく調べてみると、タネの発送元は、トルコならぬ香港。
 中国には水晶柘榴が多い由ですから、そのタネが混ざっていても不思議はないですね。
 というか、適当にそのへんのタネを送ってきただけの、ほぼサギ商品だったことがバレたわけですが、私にとってはたいへん嬉しいサギでした!



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 …と、いうのが冷静な分析ですが、ここはやっぱり、ハロウィンですし魔術を使ってしまったと思いたいです。
 おそらく、私が「白い柘榴がほしい!」と叫んだ瞬間、まだ一度も花を咲かせていなかったあの苗が、「では私が!」と白いつぼみをつけたのでしょう。うん、そうだったに違いありません。


 急にほかの実生苗もありがたみが増して、ぜんぶよく調べてみましたが、今のところ白い花は一本だけのようです。
 ペルーでは貴重品、アルパカに齧られないようすぐ囲いを作り、ただちに「取り木」を始めました。こうしてそのへんの石で、ドカッと押さえておくのが、パチャカマック式です。


 柘榴の取り木は100パーセントうまくいくので楽しみです、いずれフランクリン君にも高く売りつけじゃなくて進呈しようと思います。


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