アルパカのいる庭
(13)月と太陽 (2023年4月〜2023年11月)
アルパカのいる庭 |
昨日4月4日(kotetsuさんのお誕生日)のことです… このたびもまた、と、と、と、とつぜん生まれたのです、コヤチャの妹が!…うわーーーっ! いったい誰ですか、「ペルー海岸部では、まずめったにアルパカの仔は生まれない」なんて言ったのは?! おかげさまで、時節はずれの暑さにも関わらず、母子ともにたいへん食欲旺盛で元気にしております。飼い主のほうは、猛暑とあまりの驚きとで、少々ぐったりしておりますが… もうこのページ、「アルパカの殖える庭」って変えようかな… 詳しくは後日ゆっくりお話しいたします。 |
「私の生む仔はみな美人ね! あたりまえだけど!」と 得意そうなチャスカ様 新しいベイビーアルパカは、姉のコヤチャそっくりの、真白なメスです。(…遺伝の法則がぜんぜん読めない!) きのう4日の晩は、十三夜の月さやかで、仔アルパカも負けずに白く光って見えたので、Killa Sumaq(キヤ・スーマック、美しい月)と名付けました。宿六の日本名(むかし私が勝手につけた)が、朗ですから、ひびきあってなかなかよろしいか、と。 愛称はキヤチャです。コヤチャと同じに、ヤにアクセントをおいて、キヤーチャという風にお呼びください。 |
オスの七面鳥を大事に抱えて、 縛られた脚をほどいてやるベンハー君 ええっと、わが家の三羽の七面鳥が、結局ぜんぶメスだった!…というお話は、もうどこかでしましたっけ? オスのはずだったサルボも、それでエストレジータ(お星さま)と改名しました。 そのあとずーっと先週に至るまで、ちょうど良い年格好のオスを探していましたが、これがとても難しくて。 というのは、七面鳥を飼っている農家や個人宅では、ほとんどのオスはうんと若いうちに食べられてしまいます。もちろん数羽は残されますが、それは大切な繁殖用なので、だれも売りたがりません。 従って、3歳近いエストレジータと同年代のオスを探すのは、まず無理とわかりました。 |
わが家の七面鳥の囲い(堆肥コーナー)に 放たれた「グリンゴ」。 尾を下げて不安そうにしています。 そこで方針変更、もっと若いオスを探したところ、すぐ近所で見つかりました。それがこのオス、グリンゴ君です。(白いものですから、安易にグリンゴと名付けました。ペルーでは白や明るい金茶色の動物は、かんたんに「グリンゴ」「グリンガ」と名付けられる傾向大です…) グリンゴ君はまだ7か月ですが、とても大きいので、年上の姐さんたち(エストレジータ、ビビ、ディナ)とダメモトでお見合いさせてみよう、ということになりました。 かくしてうちにやってきたグリンゴ君ですが、かわいそうに脚をギリギリと縛られ、閉じた穀物袋につっこまれ、息も絶え絶えでご到着… 「あの売り主は、動物の扱いがわかってない!」と、ベンハー君の怒ること怒ること! もしかすると売り主は、「どうせ食用になるんだから」とでも思ったのかもしれませんね。ほんとはオーブン内ではなく、ハーレムに迎えられる王子様なんですけどね。 |
手前の黒いのがエストレジータ(元のサルボ) うしろの白がグリンゴ グリンゴ君は、しばらく七面鳥の囲いをうろついたあと、本能的に高い場所を探したのでしょうね、剪定枝を積み上げた小山にのぼって、自然とメスたちと合流しました。すると全員が羽根をふくらませ、緊張感を漂わせ始めましたが、夜なのでよく見えなかったのか、ケンカにはならずほっとしました。 でもオスが若すぎると、年嵩のメスたちがいじめ殺すこともある…と聞いてましたので、朝までちょっとばかり不安でした。鳥はそういうところに、底知れない怖さがありますよね。 |
翌朝様子を見に行くと、おや良かった、グリンゴとメスたちが、仲良くぐるぐる散歩しています! だれもケガをしていませんし、ごく平和に同居を始めたようです。 グリンゴはまだ、尾を低く下げて、やや警戒気味ですが。 |
いちばん心配だったのはエストレジータ(元のサルボ)です。 グリンゴよりずっと太っていますし、気も強いので、もしかすると攻撃を始めるのでは…と気がかりでした。 幸いグリンゴは、細いけれど背が高く、とても大きく見えるので、たぶんそれでエストレジータもすんなりと、一家のオスとして迎える気分になったようです。 でもいちばん喜んでいるのは、灰色のメスの一羽です(ビビかディナのどっちか)。 いつ見てもグリンゴ君に猛烈にロックオンしているので、笑ってしまいます。文字通りのlock onで、「グリンゴ自動追尾機能」がついてるみたいに、終始グリンゴ君につきまとっています。 |
瞳がきらっきらしています。 良かったね、好みのタイプで! |
そして三日目。完全にリラックスしたグリンゴ君、シチメンチョウらしく羽根を広げて、いばりくさって歩き回るようになりました。 七面鳥はオスのほうがずっときれい、と聞いていましたが、たしかになかなかのハンサムボーイですね。 |
これがいわば七面鳥の決めポーズで、ブルンブルン音をたてて身体をふるわせます。 またクジャクのような尾羽根は、いちばん近くのメスから見やすいように、微妙に角度をつけて広げます。なかなか芸が細かいです。 そしてときどき、驚くような大声で啼きますが、「ワワワワワン!」と犬そっくりな声です。 |
見返りハンサム 次はヒナの誕生が楽しみです。いろんな色の雑種が生まれそうです。 そのヒナたちは、いずれベンハー君一家の食用になると思われますが(そしてあまったぶんは近所で転売か?)、第一世代の4羽(エストレジータ、ビビ、ディナ、グリンゴ)は、さいごまで食べずに(笑)ペットとして生涯を全うさせてやります。 |
以上、またも家禽で課金というお話でしたが、「小さな家」の12羽のめんどりも、大きく育ってめでたくタマゴを生み始めました。 毎日8個から10個のタマゴが見つかるそうです。このところの物価高で、「もうタマゴは高すぎて買えません」と言っていたベンハー君、大喜びしています。 このめんどりたちは、一年半ほどしてタマゴを生まなくなったら、順次caldo de gallina(めんどりスープ)の材料として、ベンハー君一家の食卓に並ぶ運命ですが、それはまあ仕方ないですね… でも私は試食は遠慮しておきます、ひとたびペットとみなした動物は、やっぱちょっと食べられないなあ… |
コヤチャは1歳と5か月になり、こんな美アルパカに成長しました!もうお母さんのチャスカより大きいくらいです。 でもまだ哺乳瓶を見せると、すっとんできます。中身は、ミルクをちょっとたらした岩塩水ですが、とても喜んで飲みます。 そして妹の、前の夏に生まれたかわいいキヤチャは…… 悲しすぎてなかなか書けませんでしたが、キヤチャは生後わずか二週間で、旅立ってしまったのでした。 生まれたての幼い動物には、起きるときには起こってしまうことなので、キヤチャの両親も姉も、また人間一同も、深く悲しみながらも静かに受け入れました。 キヤチャはたった二週間のあいだに、かわいい写真をたくさん残していったので、もう少し悲しさが薄れたら、そのうちここに載せるかもしれません。 でももしかするとそれより先に、キヤチャ自身がまたこの庭に、身体を持って「戻って」くるのでは…?という気もしています。 |
注文したブロック状の芝が到着 前の夏はとても長くて暑くて(今の北半球の比ではありませんが、私にはじゅうぶん暑かった)、それもキヤチャが旅立ちを早めた一因かと思います。 暑い上に井戸水も足りなくなって、芝がとても傷んでしまいました。芝はアルパカたちの主食ですから、これにはかなり危機感を覚えています。 そこで井戸の水量が回復するのを待って、張りかえ作業にとりかかりました。 リマでよく使われる芝は、こちらでの通称「アメリカ芝」。 日本ではセントオーガスチングラスという名で、わずかに流通しているようです。 日本に多い高麗芝と比べると、葉が大きくてちょっと粗い印象ですが、そのぶん丈夫で、日陰でもよく育ち、雑草もあまり生えてこない、という特長があります。アルパカたちにも食べでがあって良さそうです。 |
大量のアンデス産ミズゴケと、 ミミズ堆肥も届きました 先だっての急な旅行中も、ベンハー君にあちこち張りかえてもらいましたが、あまりうまくいきませんでした。 敗因は、芝がはげかけたところを、アルパカたちが踏み固めて、土がカチカチになっていたこと。 |
そこで今度は、傷んだ芝をはがしたあと、固くなった土を掘り起こし、そこにミズゴケとミミズ肥料をよくよく混ぜこむことにしました。 次の夏はエル・ニーニョの猛暑が予想されますから、きっとミズゴケの保水力が助けになるのでは…と思って試しています。 |
混ぜ物をしてやわらかくなった土の上に、ブロック状の芝を植えます。 するとすぐアルパカたちがやってきて、植えたはしから試食を始めます。しばらくは誰も踏まないほうが定着しやすいんですけど、しかたないですねー |
こんな表情を見てしまうと、 食うな、とは言えませんね… |
チャスカのこの満足そうな顔! |
……そんな無茶な! |
掘り起こした土の半分は、もういらないので、そのへんに積み上げて、またひとつ新しい「丘」ができました。 |
仕事の早いベンハー君が、すぐ芝を張って、きれいな緑の丘の完成です。 この「丘だらけ作戦」、けっこう芝生の表面積が増えるので、アルパカの主食増産に役立ちそうです。 |
チャスキは、「丘」の上でふんぞりかえっているのが大好きです。 そこに襲いかかって、庭の平安を乱すのは、精神年齢がチャスキとほぼ同等な宿六です。 二匹…いえ、一人と一頭が「丘」の上で相撲をとるのを、コヤチャが心配そうに見ています。 |
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さてきのうは、庭のミモザが危うく倒れそうになっていたので、開花前で惜しいのですが、やむなく大剪定しました。 もともと傾いていたのが、この夏、梢が茂りすぎてバランスを崩したらしく、あぶないところでした。 ふつうの繊細なミモザとは別種らしいので、こんな目にあっても、たぶん生き延びてくれるかな? |
あたまを軽くしてやったら、自分でだいぶ立ち直りましたが、念のため落した枝をつっかい棒にしておきました。 なんかすごく、「俺に任せろ!」感のある枝ぶり…というか足つき?ですね…?頼もしいです。 |
剪定といえば、アルパカ。 すぐ集まってきます。 |
ミモザの葉は、アルパカたちは大量には食べませんが、それでも数日間はちょっとずつかじって楽しむことでしょう。 |
夕暮れ時に、少し視界がぼんやりとして、夢の中のような心持ちになると、今でもキヤチャの小さな白い姿が、庭をくるくる駆け回っているのがわかることがあります。 毎日ではありませんが、ときどき確かに遊びに来ています。 動物の魂は、どこにでもすぐ飛んで行けるので、次にまた生まれるまでは、プキオとパチャカマックあたりを行ったり来たりして、思う存分遊ぶつもりかもしれません。 両親のチャスカとチャスキ、それに姉のコヤチャにも、そんなキヤチャの姿がきっと見えているのだろうと思います。 またこの庭で会おうね、かわいいキヤチャ! 芝も増やしておくからね! (…もしかしたら七面鳥のグリンゴが、実はキヤチャの生まれ変わりでは? という説も、わが家では囁かれておるのですが…) |
とうとう七面鳥のヒナが生まれましたー!!!意外にかわいいでしょ? 親たちのお顔がお顔ですので、も少し爬虫類っぽいヒナを想像していました。でも小さいうちは顔にもちゃんと羽毛があって、まるっきりヒヨコなんですね。 ふわふわの綿毛に埋もれてまだよく見えない、小さな翼もとてもかわいいです。 今のところまだ一羽だけですが、いったん生まれ始めると、あとは順調にどんどん殖えるはずです。 やっぱりオスが来ると、なんというか、お話が早いですね。七面鳥は恐ろしいことに、まれにオスなしで単為生殖することもあるらしいですが… |
おととい、コンポストの山の上で、ベンハー君が生まれたてのヒナを発見。 ベージュに黒ブチのメス二羽(ディナとビビ)が、共同で温めていた三個の卵のうち、ひとつが孵ったのでした。 ベンハー君は、とりあえず手近のメス(ベージュの二羽は見分けがつかないので、仮にディナとします)といっしょにヒナをつかまえ、ほかの七面鳥から隔離することにしました。念のため、です。 するとすぐに異議を唱え始めたのが、もう一方のメスのビビ。ヒナに非常に執着しているらしく、金網越しになんとか近づこうとします。 |
そこに、黒いメスのエストレジータまで乱入。ヒナの羽根色からして、エストレジータはまず母親ではなさそうですが。 ともかくメスたちは全員、ヒナの世話がしたくてならない様子です。だからヒナをいじめる心配はなく、安心しましたが、もう少し育つまでは隔離しておきます。 重量級のエストレジータやグリンゴが、まちがって上に座りでもするとたいへんですから。 |
左の写真の一部を拡大… |
エストレジータは、たぶんよく考えたら、さいきんタマゴを生んだ覚えがなかったのでしょう。じきに退却しましたが、ビビのほうは囲いの網に張りついて、尾羽根を広げて威嚇?までしています。 ヒナがディナの羽根の下に隠れても、そのあたりを諦め悪く、じとーーーーっと睨み続けています。 |
どこでもオスは、 どうもいまいち無神経…? |
さて囲いの中では、ディナがとても満足そうにヒナを見守っています。 |
ヒナは早くも、自分で餌をついばんでいます。でもときどきディナのところにいって、クチバシの端からも食べさせてもらっています。 |
恐竜めいた冷たい瞳の七面鳥も、ヒナを見やるときは、こんな優しい顔をするんですね! 動物の親子を間近で眺めるほど、心がなごむことってちょっとないかも。 ああできれば、山羊や犬や孔雀の親子も飼いたいなあ……おっといかんいかん、落ち着け!それでは多種飼育崩壊になってしまう… |
ふだんは性格のきついチャスカ様も、仔アルパカを見るときは、たまらなく優しい目つきになります。 夏に生まれ、夏が終る前に去ってしまったキヤチャと母チャスカとの、大切な記念写真です。 |
ディナにぴったり寄り添うヒナ。 ひとしきり食べたあとは、ディナの羽根の下であったかくして休みますが、そのあいだも小さな声でピーピー啼いて、お母さんもそれにマメに返事をしています。 アルパカの母子が、始終ムームー鳴きかわして安全確認するのと、きっと同じ意味があるのでしょうね。 |
やっと最近、キヤチャの写真を見ても大丈夫になってきました!(キヤチャそっくりな、私たちによくなついたコヤチャが、すごーくなぐさめになっています) …いやーこう言ってはなんなのですが、ペットとの別れは、親との別れよりずっと長く心身に響きます(一般論ではなく、私の場合)。 ペットは私の分身そのもので、こちらに向かって理不尽なことを言ったりしたりは一切ないですから、それだけ悲しみも深くなるのですよね。 キヤチャのかわいい写真も、あとでもっと載せましょうね。キヤチャがまた次の体で(次も純白かな?それともブチアルパカかな?)うちに戻ってくる前に。 |
アンデスのおうちでは、よくこんな具合に、台所で「クイ」を放し飼いにしています。そして聖人祭やクリスマスなど、気合の入った日につかまえて料理します。 クイというのは、家畜化されたテンジクネズミのことです。またの名を、モルモットとも申します。が、「ペルー人はかわいいペットのモルモットを食うのか、なんと野蛮な!」と早とちりしてはいけません。 テンジクネズミを家畜化して、今のクイ(モルモット)を作り出したのは、アンデスの人々です。 そして、彼らがン千年に渡っておいしく食べてきたクイ(モルモット)を、わずか数百年前、ヨーロッパ人が勝手にペットに転用した、というだけのことですから。この順番が肝心ですね! スペイン人がニワトリや牛豚を持ち込むまで、アンデスでは動物性のたんぱく源は、非常に少なかったと思います。 荷駄獣のリャマや、毛を刈るためのアルパカは、むやみに食べてしまったら元も子もないですし。たぶんそれで、手軽に飼えてよく殖えるクイが、お祝いごとに欠かせない食べ物、ちょうど日本の鯛のような地位を占めるに至ったのでしょう。 現在でもクイのお肉は、主にアンデス系の人たちのあいだで、とてもありがたがられています。 たとえば、クイ飼育数がペルーいちばんのカハマルカでは、カトリックのお祭はもちろん、誕生日も卒業式も、たっぷりのクイの姿揚げが並ばないと始まりません。お世話になった人への贈り物も、炙り焼きにしたクイを山積みにして持っていかないと、失礼にあたるのだとか。 |
マンタロ渓谷ミト村の農家の、 ぬいぐるみみたいなクイ また首都リマ市内のスーパーマーケットでも、1キロくらいのクイ一匹(大きな頭部を取って真空パックにしたもの…どなたもご覧になりたくないでしょうから写真は控えます…)が、40ソル(今の換算率で約1560円)もします。 鶏肉より数倍は高く、ちょっといいシチュー用牛肉や、上等な豚肉に相当する価格です。しかもクイは骨が多くて食べるところが少ないですから、余計に割高に感じます。 アプリマック出身のベンハー君夫妻も、故郷では20匹ばかりクイを飼っていたそうです。またパチャカマックに初めて来た時は、クイの処理工場に就職したそうですから、クイとは縁の深い半生だったわけです。 でもその後は、高価なクイにはなかなか手が出ない生活で、本心ではかなり食べたく思っていたようです。 去年だったか、「クイをうちで飼ってもかまいませんか?」と相談してきたことがあります。ベンハー君のお兄さんが、クイのつがいをくれると言ったとかで、とても嬉しそうでした。 しかしいざフタを開けてみると、一匹70ソルの請求書がついて来た由で(笑)、「やっぱり今回はやめることにしました…」と報告するベンハー君、ものすごく意気消沈していて気の毒なほどでした。 |
立派に育っためんどりたち ところで今年、「小さな家」の福利厚生の一環として始めたニワトリ飼育は、その後もたいへん順調です。毎日着実に、10個から12個のタマゴが見つかるそうで、ベンハー君は私の顔を見るたびに、飽きずに何度でもお礼を言ってくれます。 今は世界中同じですけど、ペルーもたいへんな物価高。ベンハー君はもう長いこと、「タマゴは高すぎるので買えません」と言っていましたから。 |
今年6月。最初の2個のタマゴに大喜びするベンハー君。「小さな家」の窓で、ゼラニウムちゃんも笑っています。 リマ市内のスーパーでは、こういう平飼いニワトリの卵は、1ダース15ソルくらいです。従って、月1万5000円くらいは節約になっている…もしくは儲かってることになります。そりゃあ喜ぶわけですね。 まあその、初期投資およびエサ代担当の私たちは、持ち出しオンリーですけれど、しかしこの笑顔、プライスレスですよね! またベンハー君たちも、しょっちゅう生みたてタマゴをくれようとしますが、私たちは市場の地鶏屋さんと、長年のおつきあいがあるものですから… |
この成果に気を良くした私は、今度はクイの導入を決めました! さいきん人生がずいぶん楽になりまして、私はなんでも決めさえすればいいのです。あとは宿六とベンハー君が分担して、なんとか実現する、ということになっております。 クイ飼育計画も、まずはベンハー君が、自分の庭にクイ小屋を用意するところから始まります。 (クイ小屋の前でフサっているのは、ゼラニウムちゃん丹精のジャガイモです) 次にクイ本体の仕入れですが、FacebookやMercado Libre Peruで探すと、いくらでも生きたクイを扱う農家が出てきます。 でも近いに越したことはないので、ルリンにある農家に行ってみましょう。そこでは一匹単位ではなく、オス・メス・仔クイが混ざった一家族単位で販売しています。 |
農家の人が選び出すクイを、 真剣に見つめるベンハー君。 (ここまで真剣な顔みたことない…) 同時に片手で、クイの太り具合を ちゃんとチェックしてますね! ベンハー君は遠慮して、「とりあえずオスとメス一匹ずつでじゅうぶんです、じきに殖えますから」と言います。でもそれでは返って、小屋の費用や、いろいろとかかった時間が惜しいというものです。 ここは思い切って、最初から20匹態勢(だいたい二家族)から始めようと思います。 |
持参の箱に、一家族ずつ 詰めて?もらったのを… |
ベンハー君が大事に 大事に大事に…抱えて帰ります。 |
そして無事、「小さな家」に帰着。 エサのムラサキウマゴヤシ(アルファルファ)は、すでにきのう買って、軽く乾かしてあります。そこにクイたちを入れてやります。 うーんこういう一角ができると、わが家のアンデス度が、一気に跳ねあがりますね。 待ち構えていたゼラニウムちゃんが、「まあなんて大きなクイ!こんなに大きなの、見たことない!」と歓声をあげます。 |
たしかにクイも、いろいろ品種改良が進んでいるらしく、たとえばこれは、ここ数年普及し始めた「マンタロ」という品種のようです。 従来の品種とくらべて繁殖率が高く、お肉も多め…(涙)らしいです。 赤茶と白の毛皮がとてもきれいで、ものすごくかわいいですよね。うーん私にはやっぱり、どうしても食材には見えないな… |
こちらはA番のクイ一家。 |
このたび調達したのは、次の二家族です。 (クイはすぐ雑種が生まれてしまうので、品種名は「まあだいたいそっち方面」くらいの意味と思われます) @ちょっと珍しい、カリフォルニア種のご一家。 ・オス1匹 ・メス6匹(すべて妊娠中…) ・仔クイ3匹 計10匹で800ソル。 Aいろいろ混ざったご一家。 ・オス1匹(カリフォルニア種) ・メス6匹(ペルー種、マンタロ種、カリフォルニア種混合。すべて妊娠中…) ・仔クイ2匹(いろんな混血) 計9匹で600ソル。 Bおまけでもらった仔クイ(乳離れ済み) ・メス2匹(カリフォルニア種) ・オス1匹(マンタロ種) 合計22匹なので、一頭あたり約64ソル。もっと安く提供している農家もたくさんありますが、ここのはメスが全て妊娠中、というのが大きいです、すぐに三倍〜五倍に殖えるということですから。 またうちから至近だったので、妊クイさんへの移動ストレスが少なかったのも、なによりでした。 しかしですね、そういえばアルパカのチャスカとチャスキって、2頭で680ソルだったんですよね…仔アルパカ2頭が、クイ一家族ていどのお値段だなんて……とてもじゃないけど、誇り高きチャスカ様には言えません。 |
それぞれ微妙に色柄が違って、 それぞれかわいいです。 |
明らかに妊娠しているクイさん。 Embarazadi'sima! (最大級に妊娠している!)という感じ。 |
こちらは@番ファミリーの面々。 |
カリフォルニア種というのは、ペルーではまだあまり普及していない品種らしく、ベンハー君たちも、 「こういうクイは、見たことも食べたこともないです!すごくかわいいですね!」 と感心することしきり。私も初めて見ました。 |
そしてこちらが、 おまけにもらった仔クイ3匹 「…このかわいいのを、いずれ食うのかー」…ということなんですが、そのへんは考えないことにします。他国民の食の伝統は尊重したいと存じます。 うちは私はもちろん、一応アンデス系の宿六もクイを常食する習慣はありませんが、過去にアンデス各地で強要されて、何度も試食はしています。お祝いの席で出されちゃうと、食べないわけにいきませんから。 クイはふつう、香り高い各種トウガラシやオレガノなどでしっかり味付けするので、もとの味がわかりにくいのですが、あっさりした鶏の胸肉に近いと思います(あっさりしすぎなので、強めに味付けするのかもしれません)。先入観さえ捨てられたら、決してまずいものではありません。 古い写真を漁って、クイ料理の写真も見つけました。でもこのかわいいクイたちと並べて、そんな写真を載せるに忍びませんので、今回のところはやめておきます。 |
これまた超かわいいですね… うーん食用なのか… お祭の楽しい記憶と結びついたクイの味は、ベンハー君一家にとっても、非常に特別なもののようです。 ゼラニウムちゃんが、もう舌なめずりせんばかりの様子で、嬉しそうにクイを眺める表情は、「それ見せてもらっただけでも、投資の甲斐がありました!」と言いたくなるほど。いまどきなかなか、あんなに嬉しそうな人には出会えません。 その後もゼラニウムちゃんは、毎日何度もクイ小屋に行っては、喜びに浸っているそうです。たしかに22匹のクイは、アンデスの人にとっては一財産ですよね。 私たちの場合だったら、どういうたとえがぴったりでしょう? 活きサザエでいっぱいの生け簀かな…?もしそれがうちにあったら、私も毎日嬉しく見に行くと思いますわ… |
またちょっぴり家禽で課金。 6ソルのニワトリのヒナ×3羽 クイには、ムラサキウマゴヤシや台所から出る野菜くず、果物などのほかに、念のため総合飼料も少し与えます。それを近所の飼料店に買いに行った宿六が、「pavipolloのヒナ」というのを3羽、ついでに買ってきました。 pavipolloとは、あたかも七面鳥(pavo)と若鶏(pollo)の混血であるかのような呼び名ですが… でもほんとは、単に大きく育つニワトリのことなんですよね。ほとんど詐欺の、でも上手なマーケティングネームです。 もともとスペインでは、七面鳥の若鳥を「pavipollo」と呼ぶそうです。で、誰かラテンアメリカのずる賢い人が思いついたのでしょう、クリスマス前にその名で大ぶりな鶏肉を出荷すれば、七面鳥より安いのに「そこはかとない七面鳥感、お祝い感」があってよく売れるのではないか、と。 要するになんちゃって七面鳥、ニセ七面鳥ですが、ペルーのスーパーマーケットでは堂々とその呼び名が使われています。七面鳥と若鶏の順番がひっくりかえった、「pollipavo」という別名もありますが、同じことです。 おそらく、「少しは七面鳥成分も入ってるのだろう」と、名前に騙されたままの消費者も、けっこういるんじゃないかと思います。でもペルーでは100%ニワトリですのでご注意ください。 なおこのなんちゃって七面鳥のヒナたち、飼料店では「あと2ヵ月育てるとちょうど食べごろになって、クリスマスに間に合います!」と宣伝していたそうです(涙…)。私は世話はしますが、もちろん食べません、ベンハー君一家用です。 |
こちらは本物の七面鳥のヒナ。 (スペインならこれを「pavipollo」と呼ぶ…) 先日うちで孵った「シチメンチョウ1号」、 すくすく成長しています ベンハー君は、このなんちゃって七面鳥のヒナにも大喜び。 ただいま元気に成長中の「シチメンチョウ1号」(先日わが家で初めて孵ったヒナ、いずれ誰かが食べるかもしれないので、情がうつらないように名前はつけておりません)。それと一緒にしてやれば、きっと仲良くなるだろう、などと甘いことを言うのですが… トリってきついところがありますからね、種類が違うと無理じゃないかな…と思いましたが、ベンハー君、一度は試さないと納得できないようです。 でも結果は思った通り。すぐに「シチメンチョウ1号」が、なんちゃって七面鳥のヒナ3羽に襲いかかったのを、危ないところで引き離したそうです。 七面鳥はこんなに幼いときから、庭の小恐竜ぶりを発揮するのですね。 |
本日は以上でおしまい。…のはずでしたが、追記です。 クイを連れてきた翌日のこと。早くもクイ、殖えてましたわーー! 1匹のメスが、4匹も赤ちゃんを生んで、たちまち総勢26匹となりました。 赤ちゃんクイは想像とは違って、「クイらしく出来上がった姿」で生まれました。そしてじきに自分で歩いて、ムラサキウマゴヤシなど食べ始めました。 毛色はほぼ真白ですが、徐々に耳や鼻づらが黒くなっていくはずです。 |
このシャムネコ風?フェレット風?の クイも、おなかぽんぽこで、 もうすぐお産をしそうです この調子だと今後はきっと、「小さな家」の皆さんが食べるのが追っつかないほど、テンジクネズミ算で殖えていくと思われます。 母子クイは、うっとおしいオスからは離したほうが無難なので、ベンハー君はさっそく囲いの増設作業に取り掛かりました。 今後もクイ総人口につきましては、折々にご報告いたします。 「小さな家」の庭の空いたところが、ぜんぶクイハウスになってしまう日も、遠くないかもしれません。何にせよ、豊かなことは良いことです! |
そうそう、このページの主役のはずのアルパカも、ちょっとは載せなくちゃ… 珍しく強い風が吹いた日に、もうちょっとで倒れそうになった一本のイトスギを、四分の一くらいに切り詰めました。 落とした部分は、そのあと二週間ほどかけて、アルパカたちがムシャムシャおいしく頂きました。 |
チャスカ様のこの軽蔑的な視線、 味わい深くて大好き |
色とりどりのクイが来ても、かわいいヒナが生まれても、やはり庭でいちばん愛らしいのはコヤチャ!(でも例によって、水たまりで転げまわっていたので、泥だらけでお見苦しくてごめんなさい) 今でも哺乳瓶をふって見せると、「ムーーーーッ!」と鳴きながら駆け寄ってきます。 |
哺乳瓶の中身は、ミルクでうっすら色付けしただけの岩塩水。コヤチャにとって、もはや味はどうでもいいみたいです。 大事なのは、朝晩ちゃんと定時にもらうこと。私たちがうっかり忘れていると、こんなふうに家の中を覗き込み、大音量の「ムーーーッ!」で苦情申し立てをします。(この扉は洗濯場の鉄格子。外に出るのがめんどくさいときは、ここからコヤチャに飲ませます) |
なお口元の水滴は、よだれではありません。水たまりの水がしたたっているだけです。 |
そういえば猫、アルパカ、クイには、たくさん共通点がありますね。 1)手触りが良くて、2)瞳がきれいで、3)鳴き声がかわいくて、4)よだれはたらさず、5)本体はほとんどくさくない。もう無敵ですよね! ほんとは犬も欲しくて長年迷っていますが、1)吠える、2)よだれをたらす、3)犬くさい、と三拍子揃っているのが悩ましいです。 |
さる11月10日(金)は、日暮れまでは、まったくふだん通りの日でした。 アルパカたちは食欲旺盛で、夕方6時にムラサキウマゴヤシをやったときも、なんら変わった様子はありませんでした。 いつもだったらそのあと夜8時ごろ、散歩がてら果物やサツマイモの薄切りをやるのが、わが家の習慣です。 でもこの晩は、三頭でキーキーと声をあげて、ケンカを始めてしまいました。そういうとき神経質なアルパカたちは、しばらくは胸がつかえるらしく、何も食べられなくなります。 そこで、少し落ちつくのを待って、あとでおやつをあげようと考え、そのまま私はポーチで種まき作業に打ち込んでおりました。 しかし8時半になってもまだ、さかんにキーキーキーキーと聞こえてきます。 そこにきてやっと、どうもこれはおかしい、と気づいて、声を頼りにアルパカたちを探し、暗がりに懐中電灯を向けてみたところ…… こういうとんでもない状況だったのです………! |
うちのアルパカが……… また殖えている!? 完全に幻覚と思いました、さいきんワイン飲み過ぎかもと、一瞬反省もしました。 でもたしかに、まちがいなく、一頭多くなっています…! 見たことのない、かわいいブチのベイビーアルパカが、 ごくナチュラルに群れに加わっています。 でも細い脚はまだふらつき、毛皮もしっとりぬれているので、 本当に生まれ落ちてすぐの、立ち上がったばかりの赤ちゃんのようです。 なんてこった、なんてこったーーっ! アルパカの出産は、いつだってびっくり仰天です。 でもそうはいっても、夜の庭で、未知の仔アルパカにばったり遭遇、なんて… あまりに衝撃的すぎます… この仔いったい、どこから降ってきたの?! |
ここでコヤチャ姫より、重大発表です! |
(今日は本当は、なぜアルパカたちが「おがくず」だらけか、という長閑な話を載せようと思っていました。それは次回にまわします) よりによってこんな日に、宿六は長期出張でいないんですよね…そこで泡をくった私は、家畜のことならいちばん頼りになる、ベンハー君とゼラニウムちゃんを呼びに走りました。 …いえ電話すれば良かったんですが、もうじっとしていられなくて、気づいたときには「小さな家」に駆けつけていました。 |
で、この仔アルパカが、いったいどこから出て来たのか、だれが産んだのか、ということなんですが…… 暗いのもあって、よくわからないのですわこれが!!(笑) 前の二回のお産のときは、チャスカはヨレヨレ感いっぱいで、見るからに疲労困憊していました。でも今は、チャスカもコヤチャも涼しーい顔をしています。 |
そして二頭とも、新顔の仔アルパカにもう夢中らしくて、ときどきほとんど取り合い?になったりしています。 七面鳥もそうでしたが、動物のメスは、本能的に赤ちゃんを蒐集したがるものなのかもしれません。お母さん猫も、よその仔猫を無断でもらってくることがある、と聞いたことがありますし。 |
でも30分ほど過ぎたころ、急にコヤチャがちょっとだけ座り込みました。 その直後、静かに胎盤排出を終えたので、これでやっと仔アルパカの出どころが判明しました。まちがいなくお母さんはコヤチャです。 …と、いうことは、お父さんのチャスキと娘のコヤチャのあいだに生まれた仔アルパカ。古代エジプト王朝状態ですが、それはまあしかたないですね… アンデスで放牧している家畜の場合、よくあることだそうですから、私も気にしないことにします。できるだけ。 |
胎盤排出時刻から考えると、おそらく夜8時から8時半のあいだに生まれたのでしょう。私なにも知らずに、のんきにヤグルマギクのタネまいてましたよ… コヤチャは哺乳瓶で育てたぶん、格別にかわいいアルパカです。だからもし出産場面に立ち会っていたら、宿六の留守も重なって、どれほど心配したかわかりません。その心労を省いてくれたコヤチャ、つくづく飼い主に優しい良い子です。 もちろん、飼い主を呼ぶまでもない、超安産だったのだろうとも思います。コヤチャは出産ニ時間前にも、バクバク食ってたくらいですし。 |
一度バランスを崩して、ぺたんっ!と座ってしまった仔アルパカを、優しく優しく励ますコヤチャ。 ……ああコヤチャ!おまえだってまだ二歳に満たない(とてもそうは見えないけど)、いちおう赤ちゃんアルパカだというのにーーー! (獣毛繊維産業的には、極上の柔らかい毛がとれる二歳までのアルパカを、ベイビーアルパカと呼ぶようです) |
あとから考えると、このところコヤチャは、確かに太りすぎていました。でもまだ毛刈り前なので、どこまでがお肉でどこからが毛なのか、よくわからなかったのですよね。 またここ数日は、やたらたくさん食べては、ゴロゴロ寝ていることが多く、それも変と言えば変でしたが…でもコヤチャはもとから、ものぐさなところがあるので、ふだんの行動の範囲内だったような気もします。 |
庭にかわいい仔アルパカが突如降臨しますと、大人のアルパカたちも、なんだかワクワクと沸き立つように元気になります。 その姿を見るのは本当に心楽しいです。 |
祖母たるチャスカも、ものすごく嬉しそうです。 仔アルパカに何か動きがあるたびに、ぴょーん!と飛び跳ねてから、急いで駆けつけて、ていねいに匂いをかいで、無事を確認します。 |
母と祖母から、ひっきりなしの身体検査を受ける仔アルパカ。 |
暗いですし、毛がぬれているので、本当の色はまだわかりませんが、見たところ、お父さん譲りのいろんな色調のぶちが、あちこちにとんでいるようです。 嬉しいですね、まさにこういう、チョコレート&バニラ風味のぶちアルパカが、ほしかったのですよね!(…しかしこのかわいいのも、いずれは後ろのおっさんみたいになってしまうのだろうか…) |
まもなく仔アルパカは、ふらつきながらも探検を始めました。 そしてなぜだか、たまたまぶつかったミモザの幹に魅了されてしまい、しばしガジガジガジガジ齧り続けていました。 |
それから苗木を守る網(これがないと全部アルパカに食い尽くされます…)のところへ行って、またしばらくガジガジガジガジ… 生まれたての仔アルパカは、なにか齧ってみたくてならないようです。 コヤチャは絶えず仔アルパカに目配りしつつ、しっかりとお食事中。 「出産前に一食抜いたから、おなかすいちゃったわ!」って、ぜんぜん抜いてないでしょおまえ。 |
次いで壁際の柱サボテンのあいだに入り込み、「前に進めないよー、どうしてどうして?ムームームームー!」とひと騒ぎ。 大人三頭がみな血相変えて、すっとんできました。 仔アルパカのナゾ行動パターンは、オスメスに関係なく共通しているようです。 そうこうするうちに、だいぶ毛が乾いて、かわいい巻き毛が見えてきましたね! |
だいぶ夜が更けてきました。本当は、大切な初乳を飲むところを、見届けてから休みたかったのですが…。アルパカたちも大興奮して疲れてしまい、このままひと眠りするつもりのようです。 ここで、三回の出産経験があるゼラニウムちゃんが、 「赤ちゃんはみんな、おなかにいっぱい、栄養のあるお水を入れて生まれてくるから、今すぐお乳を飲まなくても心配ないですよ!」 と請け合ってくれたので、私も庭に心を残しつつ、引き上げて休むことにします。明日は早起きしないとなりませんし! |
細かすぎるリマの霧雨がわずかに舞う、ほの暖かな春の晩の、 それはそれは思いがけない出来事でした。 これは霧雨のほうにピントが合ってしまった写真ですが、 この晩のキツネにつままれたような、前後の脈略のない夢の中のような気分にぴったりです。 まさか朝起きたら、本当に夢でした、なんてことはないですよね… でもそうだったとしても、あまり驚かないかもしれないほど、およそ現実感のない奇妙な夜でした… |
11月11日の朝6時。明るくなるとすぐ、アルパカたちを見に行きました。 夢ではなかったようです、昨晩の仔アルパカ、ちゃんといました。それもえらくキリッ!とした様子で。 生まれてすぐのコヤチャやキヤチャと比べると、この仔は明らかにもっと育っています。体格もがっしりしていますし、毛もよく伸びてふさふさです。 コヤチャとキヤチャは、はじめは毛が薄く、あちこち血の色が透けて痛々しいようでした。 でもこの仔には、そういう見る人を不安にさせる弱々しさがありません。 ベンハー君の経験では、羊や牛の場合、オスはメスより生まれるのに日数がかかる由。つまりお母さんのおなかの中で、そのぶんしっかり育ってから生まれるそうです。 その結果、大きく生まれるだけでなく、誕生後に立ち上がるのも早いのだとか。もしかするとアルパカもそうなのかもしれませんね? |
生後半日の新顔さん(♂) 2023年11月11日 |
生後半日のコヤチャ(♀) 2022年2月18日 |
生後半日のキヤチャ(♀) 2023年4月4日 |
11日は朝三時ごろまで、ケチュア語辞典をひっくりかえして、何かオスに良い名前がないか探していました。あまりの驚きで寝つけなかったのもあり…。 朝の光でよく見ると、この仔パカの口元には、とても変わった模様があります。まるでめらめらと燃え上がる、太陽の紅焔(プロミネンス)のようです。 これはもしかすると、真白な月光のようだったキヤチャ(その名も月の意)が、わかりやすい目印をつけて、戻ってきてくれたのかもしれません。 インカの神話では、金色の太陽と銀色の月は、対をなす存在ですから。 |
芸術上の紅焔の表現例。 スペインの古都カセレスにて。 そこで、太陽と関わりがあって、呼びやすく、単純かつ力強い名…ということで、深夜の速成リストから選んだのは、Inti Awki (インティ・アウキ)。 太陽(神)の後継ぎ、太陽の王子。あるいはむしろ日本の「日嗣の御子(ひつぎのみこ)」あたりが、いちばん意味が近いかも。 …まあその、天文学的インフレを起こした通貨インティ、てのも昔ありましたけど、そーんな古いこと思い出す人間は、うちには私しかいませんので、いいとします(宿六は当時日本に行っていて、通貨インティは使ったことがないそうですし)。 インティなら大きな声で呼びやすく、それも関係者全員の気に入りました。 これでますます、チャスキ(飛脚)だけが平民〜というのが強調されてしまいますが。 |
朝もはよから、厳しい全身ボディチェックを受けるインティ君… 私は不用意にインティ君に接近しようとして、チャスキ(父兼祖父)とチャスカ(祖母)からえっらく叱られてしまいました(右の写真)。 |
仔アルパカがいるときは、特にチャスキが攻撃的になって、なかなか危ないのです。 キヤチャがいたころには、私も宿六もチャスキに後ろから体当たりされ、何度か地面に突き飛ばされました。アルパカはこう見えて身体がかたいので、ぶつかってくるだけでもひどく痛くて、それはもう、ものすごーーくムカつきました。 でも、群れを守りたいチャスキの気持ちには、ちょっとホロリとくるものもあり…複雑… まあしばらくは、いつも背後に気をつけながら、アルパカたちとつきあいます。自分の庭なのに、なんでビクビクしなきゃならないんだか。 でもかわいいコヤチャだけは、私が仔アルパカをとっつかまえても、まったく怒りません。 |
お乳を飲もうとして、お母さんのおなかの下にもぐったものの、そのまま通り抜けてしまい、「…あれ?」となっているインティ君。 |
「日嗣の御子よ、お乳がほしいなら、 もそっと後ろに下がりなさい」 コヤチャはさいしょから、良き母親ぶりを発揮しています。 仔アルパカがお乳を飲みやすいように、フリーズモードに入って、みじろぎもせず我慢強く立っています。 |
どうにも気になるので、おせっかいと知りつつ、インティの頭を手で押し戻してやったりしているうちに、お乳の場所がわかったようです。 |
口にミルクがついているので、ちゃんと飲めてるようですね!良かった良かった。 インティ君は口元が焦げ茶だから、わかりやすいです。 |
口先をもしょもしょさせて、しみじみミルクを味わいながら、お母さんにぴったり頸を寄せて一休み。 |
でもすぐまた起きて、散歩を始めます。チャスキもチャスカも、インティから目が離せないらしく、始終つきまとっています。 |
インティ王子とそのストーカーたち |
コヤチャは母チャスカとはまるで違って、ふだんからおっとり優しい雰囲気のアルパカです。 でも、ここまで愛情深い、ほとんど人間のような深いまなざしは、私も初めて見ました。なんだかちょっと、泣けてきますね… 動物も、決して本能だけで子育てをしているわけではなく、そこには必ず、ある種の深い感情が伴っていると思います。 |
みんなにつきまとわれて、ちょっと疲れたのかな。 少し離れたところに、ひとりで駱駝座りをすると、うとうと眠り始めました。 |
眠りに落ちて、グラッ…と大きく頭が動くと、反芻中のコヤチャがハっとなって、急いで我が子に目を向けます。 |
するとインティも一瞬目を覚まし、ぴっと耳を立て、母の姿を探します。 …おやおやインティ君は、耳のうしろにも焦げ茶の模様があるんですね!これもかなり変わった柄じゃないかな、少なくとも私はこんなのは初めて。 あたまの上には小さなベレー帽ものってますし、かなり凝った模様の仔アルパカで嬉しいです。やっぱりぶちの動物っていいな。 |
座ったところを、上から見るとこんな感じ。ぬいぐるみそのもの。 それにしても、とても生まれてすぐとは思えないフサりぶり。宿六がうらやましがることでしょう。 |
「おまえちゃんと息してる?」 今度はおばあさんのチャスカが、ちょっかいを出しに来ました。生存確認なのか?お互いにフッ…と生温かい鼻息をかけあっているようです。 (これは人間の耳元でもたまにやってくれて、飛び上がるほど驚かされますが、どういう意味があるんでしょうね?) |
それをきっかけに、インティ君パッと立ち上がり、また探検を開始。 前の二頭の仔アルパカは、はじめの数日はうつらうつらしている時間が長かったのですが、インティ君はもっと活動的です。これもメスとオスの違いかもしれません。 |
コヤチャもすぐに立ち上がり、あとにぴったりついて歩きます。 (昨晩こんなに大きな仔を生んだのに、コヤチャぜんぜん痩せてないですね?いったいどこにどうやって入ってたんでしょう?!) |
チャスカもときどき、コヤチャの代わりに警護役を引き受けます。 |
…というのも、うっかり目を離すと、こういうことが起きるからです! あーあ。きっとやると思ったよ、チャスキ… |
こうしてみると、チャスキはインティより赤みが強いですね。 インティの背中は、もっとおしゃれなコーヒー色、ココア色、あるいは森永エンゼルパイのビスケット色?ですね。白髪がもっと増えたら、こういう色に染めてみたいなあ! |
アルパカたちに、ムラサキウマゴヤシの朝食が配られます。 もちろんインティ君はまだ食べませんが、お食事中のお母さんにぴったりくっついて、仲良くいっしょに座ります。 |
お母さんもっこもこであったかいから、 すぐまた眠くなってしまう… |
うーん…ねむいねむい… |
あー揺れていますー (ちょっとチワワみたい…) |
なにしろ頸が長いので、 うしろにグラ〜ッ…と… |
そこでハッと一瞬だけ目を覚まし、 ここはどこ?わたしはアルパカ? という戸惑い顔をするのは、 電車内の居眠りさんそっくりです。 |
そしてまた、片耳ずつ眠りにおちていきます… |
と思ったら一瞬目をあけて、となりのもこもこなお母さんを確かめ、安心してまた眠ります。 口元のかわいい紅焔模様を、こちらによく見せてくれながら。 こうして比較的平穏に、インティ君の初めての朝は過ぎました。次回は、誕生翌日・午後の部をお伝えいたします。 ……実際には、今日で早くも九日目です。すでに膨大な枚数となっているインティ君の写真を整理し、順々に載せていくだけで、たぶん私の今年は終了ですね… |