・学名や和名その他いろいろの情報は、手に入ったわずかな資料からの推定にすぎません。どうか、もしかしたらそうかも、程度におとりください!
・写真は、おことわりがない限り、すべてうちの庭で撮影したものです。食草なども、うちの庭限定の観察記録です。
・また蝶の数え方については、「頭」が私にはしっくりこないので、勝手ながら「匹」で押し通します。
Hespe'ridos de Pachacamac, Peru
地味だけど、なんだか気になるセセリチョウ…
パチャカマックのセセリチョウ (1)オナガセセリ その1 (Urbanus dorantes) (2)オナガセセリ その2 (Polythrix octomaculata) (3)オナガセセリ その2 (Urbanus teleus) (4)オナガセセリ その3 (Urbanus simplicius) (5)オナガセセリ その4 アオネセセリ君 (Astraptes anaphus?) (*)オナガセセリその6 Polygonus属の誰かさん?(Polygonus?) (6)チャマダラセセリ君 (Pyrgus bocchoris) (7)チャマダラセセリ君 その2(Pyrgus chloe) (*)チャマダラセセリ亜科の誰かさん (ミヤマセセリ族あたり?) (8)コヒゲセセリ君 (Hylephila phyleus) (9)アカセセリ族の誰かさん (Cymaenes limae) (10)アカセセリ族の誰かさん (Pompeius pompeius?) (11)アカセセリ族の誰かさん (Quinta cannae?) (12)ハイイロセセリ族の誰かさん (Larodea gracia) (*)ハイイロセセリ族の誰かさん (Cymaenes trebius?) (13)ホソチャバネセセリ君 (Panoquina lucas) (*)印の蝶は、今のところ存在がとても怪しいため、数のうちに入れていません |
オナガセセリ属の和名わからん君 (Urbanus dorantes) パチャカマックに引越してすぐの頃は、庭に来てくれるのはありふれたシロチョウ(Leptophobia aripa)と、地味な茶色のオナガセセリ属のみなさんだけでした。 |
(1)オナガセセリ その1 (Urbanus dorantes) おもしろくないな…と思っていましたが、しかしこの蝶、よーく見るとただの茶色ではありません。 キラキラする金属質の輝きがあって、そこにアニマルプリント風の模様も入って、けっこうきれいです。 |
オナガセセリの写真を見ると、まだ陽射しを遮る木々がなかった家に、引越してすぐの暑い暑い夏を思い出します。 |
セセリ・ニュース 21-04-29 オナガセセリ(Urbanus dorantes)が、きれいに翅を広げたところを、きのう初めて写真に撮りました。 地味な蝶と思っていましたが、胴が緑色を帯びていて、また翅のフリンジもみごとなだんだらで、意外にもぱっと目をひきます。 |
2022年4月。また翅を広げてくれたので、写真を追加します。 |
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左とは違う、Polythrix octomaculata それで気づいたのが、上の写真の蝶を、Urbanus dorantesと混同していたこと。よく見たらぜんぜん違った… これは Polythrix octomaculata のようです。フフフフ……新たに探さないで一種増えた!↓ |
セセリ・ニュース 21-05-17 2021年5月。密生した芝をとって、開けた花壇を作ったら、近年あまり来なくなっていたオナガセセリたちが、ぞろぞろと戻ってきてくれました。 |
そして初めて、かわいらしくくっついているところを見せてくれました。 こういうときは近づいてもまず逃げないので、間近から観察するチャンスですね。 |
観察を始めて何年も過ぎてから、Urbanus dorantesとの違いに気づいたこの蝶々。 上の翅に、半透明の大きな「窓」がいくつもあります。 |
(2)オナガセセリ その2 (Polythrix octomaculata) 「窓」ごしに、ブッドレアの 紫色が透けています |
セセリチョウらしい 大きな黒い目がかわいいです |
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オナガセセリ属の和名わからん君(Urbanus teleus) |
(3)オナガセセリその3 (Urbanus teleus) 上のオナガセセリその1君とは、別の蝶だとわかるまで、だいぶ月日がかかりました… よく似ていますが、「窓」の大きさがまったく違います。 |
「窓」が小さいぶん、より地味ですが、キラキラ五色に光る翅の、けもの的かわいさは共通しています。 |
たぶんデート相手待ちの オナガセセリ君。 真剣な表情…に見えます |
オナガセセリ属の和名わからん君 (Urbanus simplicius) |
(4)オナガセセリその4 (Urbanus simplicius) これまた、上の二つとは別種と気づくまで、たぶん数年はかかりました… 「窓」はますます小さく、アニマルプリントもなく地味ですが、日光がカっと当たった時の輝きと、撫でたくなるようなけもの感は、三種のなかで一番かもしれません。 |
オナガセセリ属の和名わからん君 (Astraptes anaphus?) |
(5)オナガセセリその5 アオネセセリ君 (Astraptes anaphus?) オナガセセリその1かその2の、しっぽのちぎれた個体と思っていましたが、「窓」がまったくないので別種と気づきました。 以上、四種のオナガセセリのみなさんでした。 その後、庭の草木が育ち、ほかの蝶が増えるにつれて、うちに来るオナガセセリの数はぐっと少なくなりました。開けた草地を好む蝶なので、林に近くなったうちの庭は、もはやお気に召さないのかもしれません。 オナガセセリは日本にはいないそうですし、もう少しありがたがっておけばよかったかな…? |
セセリ・ニュース 21-04-29 アオネセセリ君との再会 アオネセセリ君との再会! センニチコウを植えてから、急にセセリチョウとシジミチョウが増えた気がします。 今後もし、庭で新顔さんが見つかるとしたら、それはたぶんセセリさんかシジミさんだと思うんですよね、地味で見逃しやすい蝶たちですから。 なので彼らに好かれる花は、それだけでも貴重です。その上かわいくて写真写りも良くて、センニチコウ最高です。 |
はっきりした写真がなかったアオネセセリ君も、とうとう実在を確認できました。 これもセンニチコウと、同じく新導入のサルビアのおかげです。 下の翅の黄色いフリンジからして、Astraptes anaphusでほぼまちがいないと思います。 |
これも新顔さん? |
(*)オナガセセリその6 Polygonus属の誰かさん?(Polygonus?) 植えたばかりのセンニチコウに、きのうフラっとやってきたセセリチョウ。 上記のUrbanus dorantesの、尾がとれたやつ、かと思いましたが(尾がとれたやつには、過去に何度も「新顔さんかも?」とぬか喜びさせられています)、これはよーく見ても尾が切れた痕跡がありません。 あまり尾の長くないオナガセセリ(意味不明の命名だなあ…)、Polygonus属のどなたかではないかと、今のところ推測しています。 |
チャマダラセセリ族の和名わからん君 (たぶんPyrgus bocchoris trisignatus?) |
(6)チャマダラセセリ君 その1 (Pyrgus bocchoris trisignatus?) 庭で見つけて、いちばん嬉しかったセセリチョウがこちら! とりあえずPyrgus bocchorisなのは、確かそうですが、その中でも隣国チリに多いという Pyrgus bocchoris trisignatusに模様が似ています。 ネットで古い標本写真を検索すると、アレキーパの火山コロプーナ山腹(標高4400m地点)や、中央道沿いのサン・マテオ(標高3200m、ミネラル水「サン・マテオ」の産地)で採取されたPyrgus bocchoris trisignatus君が出てきます。 こういう高地と関わりの深い蝶に、うちの庭で出会うたび、私もふわっと塀を飛びこえアンデスまで飛んでいけそうな、伸びやかーな気分になります。 |
近所のQuebrada Verdeで撮影 2008年の写真の中から、同じ蝶を見つけました。 うちから目と鼻の先の、Quebrada Verdeのロマス (別名Lomas de Lucmo)で、真冬の7月に撮ったものです。 |
近所のQuebrada Verdeで撮影 うちでは夏の終りごろ、アンデスと縁の深い蝶が、フラっと数日だけやってくることが多いです。 なのでこのチャマダラセセリ君も、そういう珍客かと思っていましたが、意外にもっと近いところから来たのかもしれませんね。まあロマスじたい、立派なアンデスの隆起の始まりなのですけれど。 いずれにしても、こういう高地の蝶(と思われているもの)が、ロマスで冬越ししていることが確認できたのは嬉しいです。 |
セセリ・ニュース 21-05-17 久々に一目でそれとわかる 新顔さん登場! 左の花にとまっているのは、当地のハナアブ君(dioprosopa clavata)。 |
(7)チャマダラセセリ君 その2(Pyrgus chloe) センニチコウ、グッジョブ!! |
既出のチャマダラセセリ君(Pyrgus bocchoris trisignatus)に似ていますが、白い模様がもっと多くて、より華やかです。 |
その模様の配置から、Pyrgus chloeでほぼ間違いなさそうです。 ネット上には、うちから車で2時間のアンティオキア(ルリン川中流部、標高1500m)で採取された標本が載っています。 今までうちではまったく見なかったので、これもやはり、秋の上天気につられてルリン川下流域までフラリとやってきた、珍客だったかと思われます。 |
「私はいったいだれでしょう?」 ミヤマセセリっぽい?? |
(*)チャマダラセセリ亜科の誰かさん?ミヤマセセリ族あたり??? 「私もいったいだれでしょう?」 アオネセセリ君にも見えるけど、 上翅に白い模様がありますね… 二匹ともボロボロすぎて、あれなんですけど…… 観察を続けるうちに、手掛かりが見つかるかもしれないので、いちおう載せておきます。 |
さて以下、恐怖のセセリチョウ亜科へと参ります。 なんでもセセリチョウ亜科は、新熱帯区だけで、軽く1000種をこえるのだそうで!! 初心者以前の私に、同定などできるはずもありませんが、かといって試しもせずに引き下がるのも、ちょっと口惜しく… そこでとりあえず、ペルーで特にありふれていそうな種類をざっと調べ、そこからおおよその見当をつけてみました。 |
アカセセリ族のコヒゲセセリ君(Hylephila phyleus)♂ 水玉模様の金色マントの、小さな王子様…に見えません?? |
(8)コヒゲセセリ君(Hylephila phyleus) 一年を通して、とても多いセセリチョウです。これはたぶん、Hylephila phyleusで合っている可能性が高そうです。 小指の先くらいの蝶で、飛びかたも蛾じみていて、特に関心もなかったのですが、写真をじっくり見るうちに、そのかわいさにやられました! アルパカもまっさおの黒目勝ちなところが、特に好きです。 |
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ブチ模様がとても小さいのも、たまに見ますが、たぶん同じコヒゲセセリ。 |
こちらはたぶんコヒゲセセリさん(♀) 昼前の木漏れ日が美しくて、 気に入っている写真です。 |
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バーベナでお食事中の コヒゲセセリさん(♀) コヒゲセセリは、三尺バーベナが咲く暑い夏も…… |
寒緋桜で休憩中の コヒゲセセリさん(♀) ……寒緋桜が咲く寒い冬も、いつも庭のどこかにいます。 |
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<コヒゲセセリ夫妻 デート写真集>
黒い絹地を張ったような大きな目を持つ、四頭身ほどの可憐な妖精のようで、実にかわいいです! (わりと害虫でもありますが……) |
アカセセリ族の誰かさん♂ |
(9)アカセセリ族の誰かさん →ペルー&エクアドル固有のCymaenes limae この小さなセセリチョウが、上のコヒゲセセリ君ではないと気づくまで、やはり数年はかかったと思います… 次いで、米大陸の黄色いセセリチョウAnatrytone属にあたってみましたが、こちらは上の翅に、光を通す小さな「窓」があるので、どうも違うようです。 今のところ、もっと模様が似ているQuasimellana属あたりなのかな?と想像しています。 2022年4月追記。その後、ペルー&エクアドル固有のCymaenes limaeらしいとわかりました。 |
上の翅に、ぽっと小さく光が通る「窓」があります |
たまたまキズのある個体だったのかも、とも思いましたが、その後も同じところが光る蝶にばかり出会うので、たぶんそういう模様なのでしょう。 |
アカセセリ族の誰かさん♀ さてこちらは、別種のセセリチョウと思って、むなしく調べまくっていた蝶ですが… |
ピンクのペンタス上で、いつもの黄色いセセリチョウとデート中のところに遭遇、どうやら同じ蝶らしい…とやっと気づきました。 たぶん色が茶がかったほうが♀なのでしょう。 |
アカセセリ族の誰かさん♀ なんとなくうちのチャスキ君っぽい色あわせ。 こんなに小さいのに、細部までよく作りこまれていますよね…本当にいったい誰がやってるんだ… |
くっきりした「窓」がきれいです |
背中にさんさんと日を浴びる、アカセセリ族の誰かさん♀ ちょっとしたステンドグラス効果ですね! |
アカセセリ族の誰かさん(Pompeius pompeius?) |
(10)アカセセリ族の誰かさん(Pompeius pompeius?) |
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左と同じ個体ですが、日陰だとだいぶ違って見えますね。 |
セセリ・ニュース 21-04-26 このセセリチョウ、もしかすると新しい庭の仲間かもしれません。 ここまで濃い茶色のセセリチョウは、まだ見たことがありません、カカオ分の高いチョコレートみたいな色です。 濃い茶色のセセリチョウの中から、ペルーにいてもおかしくない種類にあたって、いちおうQuinta cannaeを選び出してみました。 |
(11)アカセセリ族の誰かさん (Quinta cannae?? ) 翅の窓ごしに、アフリカンデイジーのピンクが少し透けて見えます。 |
既出のPompeius pompeius君に似ている…と思いましたが、 茶色の濃さと、腹部にシマ模様がないところが違います。別種なのはまあ確かでしょう。 |
ハイイロセセリ族の誰かさん |
(12)ハイイロセセリ族の誰かさん その1( →ペルー固有種のLerodea gracia これまた今後の観察待ちですが、いちおう載せます。 2022年4月追記。その後、ペルー固有種のLarodea graciaらしいとわかりました。 |
セセリ・ニュース 21-04-26 あまりに地味で、今までちゃんと撮れた写真がなかったハイイロセセリ君と、うまく再会できました。 どんな地味な蝶も、こうしてじっくり見ると、ほんとによく考え抜かれたデザインなんですよね。ほんと誰が考えているんでしょうねえ。 |
逆光のハイイロセセリ君 今の楽しみは、秋に満開になるアロイシアの観察です。 昼のしたくがだいたい終ったところで、脚立を出して、アロイシアの茂みに頭をつっこみます。 甘い香りを深く吸って、蜜蜂がブンブンうなる音を聞きながら蝶を探していると、いい感じに頭がからっぽになります。 からっぽになりすぎて、昼食時刻が遅れることもしばしばですけれど。 |
ハイイロセセリ族の誰かさん(Cymaenes trebius?) |
(*)ハイイロセセリ族の誰かさん その2(Cymaenes trebius?) 逆光の写真しかありませんが、それでも上の翅に、くっきりした白い三ツ星が見えます。 Cymaenes trebiusは北米・中米・南米に広く分布するそうなので、可能性はありそうです。 |
ホソチャバネセセリ君(Panoquina lucas?) チョコレート色の翅の上に、白チョークでうっすら描いたかのような水玉模様がしゃれています。 |
(13)ホソチャバネセセリ君(Panoquina lucas?) 模様と形が特徴的なので、当たらずといえども遠からず、くらいかと思います。 これまた北米・中米・南米に広く分布するセセリチョウだそうです。 本当のところ、写真を今回よく見直すまで、こんなのを撮っていたとは自分でも知りませんでした。なんとも小さな蝶ですから。 知らないうちに一種増え?て、すごく得した気分です。 |
この世で好きなものが増えるのは、嬉しいことです。 でも、この地味なセセリチョウの皆さんに興味をもつ日が来るとは、思わなかったなあ… ただその地味さがまた、大きな魅力ですよね。 小さくて蛾っぽくて紛らわしい…だけに、庭にはまだたくさん、見逃している別のセセリチョウがいるかもしれませんから。 次の夏は、足もと手もとをしっかり見ながら、よくみると美男美女の蝶たち(セセリチョウ&シジミチョウ)探しを続けます。 |