casita.pngペルー談話室 玄関に戻る


<パチャカマックの蝶々>最新ページはこちら

・学名や和名その他いろいろの情報は、手に入ったわずかな資料からの推定にすぎません。どうか、もしかしたらそうかも、程度におとりください!
・写真は、おことわりがない限り、すべてうちの庭で撮影したものです。食草なども、うちの庭限定の観察記録です。
・また蝶の数え方については、「頭」が私にはしっくりこないので、勝手ながら「匹」で押し通します。



パチャカマックのセセリチョウ

Hespe'ridos de Pachacamac, Peru


2020年8月25日作成

2022年5月6日更新


hesperidos01.JPG



地味だけど、なんだか気になるセセリチョウ…



パチャカマックのセセリチョウ


(1)オナガセセリ その1 (Urbanus dorantes)
(2)オナガセセリ その2 Polythrix octomaculata)
(3)オナガセセリ その2 (Urbanus teleus)
(4)オナガセセリ その3 (Urbanus simplicius)

(5)オナガセセリ その4 アオネセセリ君Astraptes anaphus?)
(*)オナガセセリその6 Polygonus属の誰かさん?(Polygonus?)
(6)チャマダラセセリ君 (Pyrgus bocchoris)
(7)チャマダラセセリ君 その2(Pyrgus chloe)
(*)チャマダラセセリ亜科の誰かさん (ミヤマセセリ族あたり?)
(8)コヒゲセセリ君 (Hylephila phyleus)
(9)アカセセリ族の誰かさん
Cymaenes limae
(10)アカセセリ族の誰かさん (Pompeius pompeius?)
(11)アカセセリ族の誰かさん (Quinta cannae?)
(12)ハイイロセセリ族の誰かさん
Larodea gracia
(*)ハイイロセセリ族の誰かさん (Cymaenes trebius?)
(13)ホソチャバネセセリ君 (Panoquina lucas)


(*)印の蝶は、今のところ存在がとても怪しいため、数のうちに入れていません





hesperidos07.JPG


オナガセセリ属の和名わからん君 (Urbanus dorantes)


 パチャカマックに引越してすぐの頃は、庭に来てくれるのはありふれたシロチョウ(Leptophobia aripa)と、地味な茶色のオナガセセリ属のみなさんだけでした。


(1)オナガセセリ その1 (Urbanus dorantes)

hesperidos03.JPG


 おもしろくないな…と思っていましたが、しかしこの蝶、よーく見るとただの茶色ではありません。
 キラキラする金属質の輝きがあって、そこにアニマルプリント風の模様も入って、けっこうきれいです。



hesperidos02.JPG


 オナガセセリの写真を見ると、まだ陽射しを遮る木々がなかった家に、引越してすぐの暑い暑い夏を思い出します。

セセリ・ニュース 21-04-29


hesperidos52.JPG


 オナガセセリ(Urbanus dorantes)が、きれいに翅を広げたところを、きのう初めて写真に撮りました。
 地味な蝶と思っていましたが、胴が緑色を帯びていて、また翅のフリンジもみごとなだんだらで、意外にもぱっと目をひきます。



hesperidos065.JPG


 2022年4月。また翅を広げてくれたので、写真を追加します。


hesperidos063.JPG


hesperidos064.JPG


hesperidos05.JPG


左とは違う、Polythrix octomaculata


 それで気づいたのが、上の写真の蝶を、Urbanus dorantesと混同していたこと。よく見たらぜんぜん違った…
 これは
Polythrix octomaculata のようです。フフフフ……新たに探さないで一種増えた!↓


セセリ・ニュース 21-05-17


hesperidos061.JPG


 2021年5月。密生した芝をとって、開けた花壇を作ったら、近年あまり来なくなっていたオナガセセリたちが、ぞろぞろと戻ってきてくれました。


hesperidos062.JPG


 そして初めて、かわいらしくくっついているところを見せてくれました。
 こういうときは近づいてもまず逃げないので、間近から観察するチャンスですね。





hesperidos04.JPG


 観察を始めて何年も過ぎてから、Urbanus dorantesとの違いに気づいたこの蝶々。
 上の翅に、半透明の大きな「窓」がいくつもあります。



(2)オナガセセリ その2 (Polythrix octomaculata)


hesperidos05.JPG

「窓」ごしに、ブッドレアの
紫色が透けています



hesperidos06.JPG

セセリチョウらしい
大きな黒い目がかわいいです



hesperidos066.JPG




hesperidos12.JPG


オナガセセリ属の和名わからん君(Urbanus teleus)


(3)オナガセセリその3 (Urbanus teleus)

hesperidos10.JPG


 上のオナガセセリその1君とは、別の蝶だとわかるまで、だいぶ月日がかかりました…
 よく似ていますが、「窓」の大きさがまったく違います。



hesperidos11.JPG


 「窓」が小さいぶん、より地味ですが、キラキラ五色に光る翅の、けもの的かわいさは共通しています。


hesperidos13.JPG


たぶんデート相手待ちの
オナガセセリ君。
真剣な表情…に見えます





hesperidos08.JPG


オナガセセリ属の和名わからん君 (Urbanus simplicius)


(4)オナガセセリその4 (Urbanus simplicius)

hesperidos09.JPG


 これまた、上の二つとは別種と気づくまで、たぶん数年はかかりました…
 「窓」はますます小さく、アニマルプリントもなく地味ですが、日光がカっと当たった時の輝きと、撫でたくなるようなけもの感は、三種のなかで一番かもしれません。





hesperidos16.JPG


オナガセセリ属の和名わからん君 (Astraptes anaphus?)


(5)オナガセセリその5 アオネセセリ君 (Astraptes anaphus?)

hesperidos17.JPG


 オナガセセリその1かその2の、しっぽのちぎれた個体と思っていましたが、「窓」がまったくないので別種と気づきました。

 以上、四種のオナガセセリのみなさんでした。
 その後、庭の草木が育ち、ほかの蝶が増えるにつれて、うちに来るオナガセセリの数はぐっと少なくなりました。開けた草地を好む蝶なので、林に近くなったうちの庭は、もはやお気に召さないのかもしれません。
 オナガセセリは日本にはいないそうですし、もう少しありがたがっておけばよかったかな…?


セセリ・ニュース 21-04-29
アオネセセリ君との再会


hesperidos055.JPG


アオネセセリ君との再会!


 センニチコウを植えてから、急にセセリチョウとシジミチョウが増えた気がします。
 今後もし、庭で新顔さんが見つかるとしたら、それはたぶんセセリさんかシジミさんだと思うんですよね、地味で見逃しやすい蝶たちですから。
 なので彼らに好かれる花は、それだけでも貴重です。その上かわいくて写真写りも良くて、センニチコウ最高です。



hesperidos056.JPG


 はっきりした写真がなかったアオネセセリ君も、とうとう実在を確認できました。
 これもセンニチコウと、同じく新導入のサルビアのおかげです。
 下の翅の黄色いフリンジからして、Astraptes anaphusでほぼまちがいないと思います。





hesperidos53.JPG


これも新顔さん?



(*)オナガセセリその6 Polygonus属の誰かさん?(Polygonus?)


hesperidos54.JPG


 植えたばかりのセンニチコウに、きのうフラっとやってきたセセリチョウ。
 上記のUrbanus dorantesの、尾がとれたやつ、かと思いましたが(尾がとれたやつには、過去に何度も「新顔さんかも?」とぬか喜びさせられています)、これはよーく見ても尾が切れた痕跡がありません。
 あまり尾の長くないオナガセセリ(意味不明の命名だなあ…)、Polygonus属のどなたかではないかと、今のところ推測しています。





hesperidos31.JPG


チャマダラセセリ族の和名わからん君
(たぶんPyrgus bocchoris trisignatus?)



(6)チャマダラセセリ君 その1 (Pyrgus bocchoris trisignatus?)

hesperidos30.JPG


 庭で見つけて、いちばん嬉しかったセセリチョウがこちら!

 とりあえずPyrgus bocchorisなのは、確かそうですが、その中でも隣国チリに多いという Pyrgus bocchoris trisignatusに模様が似ています。
 ネットで古い標本写真を検索すると、アレキーパの火山コロプーナ山腹(標高4400m地点)や、中央道沿いのサン・マテオ(標高3200m、ミネラル水「サン・マテオ」の産地)で採取され
たPyrgus bocchoris trisignatus君が出てきます。

 こういう高地と関わりの深い蝶に、うちの庭で出会うたび、私もふわっと塀を飛びこえアンデスまで飛んでいけそうな、伸びやかーな気分になります。


hesperidos071.JPG


近所のQuebrada Verdeで撮影


 2008年の写真の中から、同じ蝶を見つけました。
 うちから目と鼻の先の、Quebrada Verdeのロマス (別名Lomas de Lucmo)で、真冬の7月に撮ったものです。



hesperidos070.JPG


近所のQuebrada Verdeで撮影


 うちでは夏の終りごろ、アンデスと縁の深い蝶が、フラっと数日だけやってくることが多いです。
 なのでこのチャマダラセセリ君も、そういう珍客かと思っていましたが、意外にもっと近いところから来たのかもしれませんね。まあロマスじたい、立派なアンデスの隆起の始まりなのですけれど。


 いずれにしても、こういう高地の蝶(と思われているもの)が、ロマスで冬越ししていることが確認できたのは嬉しいです。




セセリ・ニュース 21-05-17


hesperidos057.JPG


久々に一目でそれとわかる
新顔さん登場!


 左の花にとまっているのは、当地のハナアブ君(dioprosopa clavata)。


(7)チャマダラセセリ君 その2(Pyrgus chloe)



hesperidos059.JPG


センニチコウ、グッジョブ!!


hesperidos058.JPG


 既出のチャマダラセセリ君(Pyrgus bocchoris trisignatus)に似ていますが、白い模様がもっと多くて、より華やかです。


hesperidos060.JPG


 その模様の配置から、Pyrgus chloeでほぼ間違いなさそうです。
 ネット上には、うちから車で2時間のアンティオキア(ルリン川中流部、標高1500m)で採取された標本が載っています。
 今までうちではまったく見なかったので、これもやはり、秋の上天気につられてルリン川下流域までフラリとやってきた、珍客だったかと思われます。





hesperidos45.JPG


「私はいったいだれでしょう?」
ミヤマセセリっぽい??



(*)チャマダラセセリ亜科の誰かさん?ミヤマセセリ族あたり???

hesperidos47.JPG


「私もいったいだれでしょう?」
アオネセセリ君にも見えるけど、
上翅に白い模様がありますね…


 二匹ともボロボロすぎて、あれなんですけど……
 観察を続けるうちに、手掛かりが見つかるかもしれないので、いちおう載せておきます。





 さて以下、恐怖のセセリチョウ亜科へと参ります。
 なんでもセセリチョウ亜科は、新熱帯区だけで、軽く1000種をこえるのだそうで!!
 初心者以前の私に、同定などできるはずもありませんが、かといって試しもせずに引き下がるのも、ちょっと口惜しく…
 そこでとりあえず、ペルーで特にありふれていそうな種類をざっと調べ、そこからおおよその見当をつけてみました。





hesperidos22.JPG


アカセセリ族のコヒゲセセリ君(Hylephila phyleus)♂
水玉模様の金色マントの、小さな王子様…に見えません??



(8)コヒゲセセリ君(Hylephila phyleus)

hesperidos23.JPG


 一年を通して、とても多いセセリチョウです。これはたぶん、Hylephila phyleusで合っている可能性が高そうです。
 小指の先くらいの蝶で、飛びかたも蛾じみていて、特に関心もなかったのですが、写真をじっくり見るうちに、そのかわいさにやられました!
 アルパカもまっさおの黒目勝ちなところが、特に好きです。



hesperidos19.JPG


 ブチ模様がとても小さいのも、たまに見ますが、たぶん同じコヒゲセセリ。


hesperidos20.JPG


こちらはたぶんコヒゲセセリさん(♀)
昼前の木漏れ日が美しくて、
気に入っている写真です。



hesperidos14.JPG


バーベナでお食事中の
コヒゲセセリさん(♀)


コヒゲセセリは、三尺バーベナが咲く暑い夏も……


hesperidos21.JPG


寒緋桜で休憩中の
コヒゲセセリさん(♀)


 ……寒緋桜が咲く寒い冬も、いつも庭のどこかにいます。


<コヒゲセセリ夫妻 デート写真集>
hesperidos35.JPG


芝生でデート中のコヒゲセセリ夫妻
hesperidos46.JPG


アロエでデート中のコヒゲセセリ夫妻
hesperidos34.JPG


ランタナでデート中のコヒゲセセリ夫妻


黒い絹地を張ったような大きな目を持つ、四頭身ほどの可憐な妖精のようで、実にかわいいです!
(わりと害虫でもありますが……)





hesperidos18.JPG


アカセセリ族の誰かさん♂


(9)アカセセリ族の誰かさん(Quasimellana属?)
  →ペルー&エクアドル固有のCymaenes limae

hesperidos26.JPG


 この小さなセセリチョウが、上のコヒゲセセリ君ではないと気づくまで、やはり数年はかかったと思います…
 次いで、米大陸の黄色いセセリチョウAnatrytone属にあたってみましたが、こちらは上の翅に、光を通す小さな「窓」があるので、どうも違うようです。
 今のところ、もっと模様が似ているQuasimellana属あたりなのかな?と想像しています。

 2022年4月追記。その後、ペルー&エクアドル固有のCymaenes limaeらしいとわかりました。


hesperidos32.JPG


上の翅に、ぽっと小さく光が通る「窓」があります


hesperidos41.JPG


 たまたまキズのある個体だったのかも、とも思いましたが、その後も同じところが光る蝶にばかり出会うので、たぶんそういう模様なのでしょう。


hesperidos36.JPG


アカセセリ族の誰かさん♀


 さてこちらは、別種のセセリチョウと思って、むなしく調べまくっていた蝶ですが…


hesperidos43.JPG


 ピンクのペンタス上で、いつもの黄色いセセリチョウとデート中のところに遭遇、どうやら同じ蝶らしい…とやっと気づきました。
 たぶん色が茶がかったほうが♀なのでしょう。



hesperidos44.JPG


アカセセリ族の誰かさん♀


 なんとなくうちのチャスキ君っぽい色あわせ。
 こんなに小さいのに、細部までよく作りこまれていますよね…本当にいったい誰がやってるんだ…



hesperidos39.JPG


くっきりした「窓」がきれいです


hesperidos42.JPG


背中にさんさんと日を浴びる、アカセセリ族の誰かさん♀
ちょっとしたステンドグラス効果ですね!





hesperidos25.JPG


アカセセリ族の誰かさん(Pompeius pompeius?)


(10)アカセセリ族の誰かさん(Pompeius pompeius?)

hesperidos069.JPG



hesperidos067.JPG


hesperidos40.JPG


 左と同じ個体ですが、日陰だとだいぶ違って見えますね。




セセリ・ニュース 21-04-26


hesperidos48.JPG


 このセセリチョウ、もしかすると新しい庭の仲間かもしれません。
 ここまで濃い茶色のセセリチョウは、まだ見たことがありません、カカオ分の高いチョコレートみたいな色です。
 濃い茶色のセセリチョウの中から、ペルーにいてもおかしくない種類にあたって、いちおうQuinta cannaeを選び出してみました。



(11)アカセセリ族の誰かさん (Quinta cannae?? )



hesperidos49.JPG


 翅の窓ごしに、アフリカンデイジーのピンクが少し透けて見えます。


hesperidos068.JPG

既出のPompeius pompeius君に似ている…と思いましたが、
茶色の濃さと、腹部にシマ模様がないところが違います。別種なのはまあ確かでしょう。





hesperidos15.JPG


ハイイロセセリ族の誰かさん


(12)ハイイロセセリ族の誰かさん その1Lerodea eufala?
  →ペルー固有種のLerodea gracia

hesperidos33.JPG


 これまた今後の観察待ちですが、いちおう載せます。
 2022年4月追記。その後、ペルー固有種のLarodea graciaらしいとわかりました。


セセリ・ニュース 21-04-26


hesperidos51.JPG


 あまりに地味で、今までちゃんと撮れた写真がなかったハイイロセセリ君と、うまく再会できました。
 どんな地味な蝶も、こうしてじっくり見ると、ほんとによく考え抜かれたデザインなんですよね。ほんと誰が考えているんでしょうねえ。



hesperidos50.JPG


逆光のハイイロセセリ君


 今の楽しみは、秋に満開になるアロイシアの観察です。
 昼のしたくがだいたい終ったところで、脚立を出して、アロイシアの茂みに頭をつっこみます。
 甘い香りを深く吸って、蜜蜂がブンブンうなる音を聞きながら蝶を探していると、いい感じに頭がからっぽになります。
 からっぽになりすぎて、昼食時刻が遅れることもしばしばですけれど。





hesperidos29.JPG


ハイイロセセリ族の誰かさん(Cymaenes trebius?)


(*)ハイイロセセリ族の誰かさん その2(Cymaenes trebius?)

hesperidos28.JPG


 逆光の写真しかありませんが、それでも上の翅に、くっきりした白い三ツ星が見えます。
 
Cymaenes trebiusは北米・中米・南米に広く分布するそうなので、可能性はありそうです。



hesperidos38.JPG


ホソチャバネセセリ君(Panoquina lucas?)


 チョコレート色の翅の上に、白チョークでうっすら描いたかのような水玉模様がしゃれています。


(13)ホソチャバネセセリ君(Panoquina lucas?)

hesperidos37.JPG


 模様と形が特徴的なので、当たらずといえども遠からず、くらいかと思います。
 これまた北米・中米・南米に広く分布するセセリチョウだそうです。


 本当のところ、写真を今回よく見直すまで、こんなのを撮っていたとは自分でも知りませんでした。なんとも小さな蝶ですから。
 知らないうちに一種増え?て、すごく得した気分です。





この世で好きなものが増えるのは、嬉しいことです。
でも、この地味なセセリチョウの皆さんに興味をもつ日が来るとは、思わなかったなあ…


ただその地味さがまた、大きな魅力ですよね。
小さくて蛾っぽくて紛らわしい…だけに、庭にはまだたくさん、見逃している別のセセリチョウがいるかもしれませんから。
次の夏は、足もと手もとをしっかり見ながら、よくみると美男美女の蝶たち(セセリチョウ&シジミチョウ)探しを続けます。


casita.pngペルー談話室 玄関に戻る