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パチャカマックの家猫さん

(第2&第3シーズン)




第1シーズン傑作選

始まりました!第2シーズン

二世たちとのさいしょの2年


2024年4月1日(月)


<クリスマスのお別れと、新年の「再々会」>


3)貯金箱ネコがやってきた!@



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 2024年1月2日。はるばるリマの反対側まで、ハシンタのあとつぎ候補、キラ猫さんに会いに行きました。

 まだ年が明けたばかりで、当地はクリスマスシーズン続行中。Nさんのお宅でも、大きなクリスマスツリーに黄色の飾りを足して、新年らしさを演出しています。
 「来年こそダイエット始める!」とか書いてありますね。私の経験上、あしたとか来年とかは、本当には一度も来たことないのですが…(笑)どこまで行っても「今」ですものね。
 なおNさんご自身は、ダイエットなんか必要ない、ほっそりとしたお嬢さんです。



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一瞬だけ顔が見えたキラ猫さん。


 Nさんが連れてきたキラ猫は、完全にパニック状態だったため、ゆっくり顔を見るひまもないまま、持参の猫バッグに押し込まれました。
 Nさん的には、もう私たちがもらっていくものと、決まっていたらしく……ま、いいか、これもご縁です。少なくとも宿六は大喜びです。


 別れ際、Nさんがしみじみ言うには、「キラはほんっとうに、ほんとうに気の弱い、怖がりな猫なんです…。でも猫慣れしたあなた方なら、きっと大丈夫ですね、安心しました!」
 え?!ちょっとまったーーっ!そんなお話は聞いてないよー!


 前のハシンタ二世は超怖がりで、逃げ込んだ寝台下から全身を出すまでに、まるまる二週間かかったんですよね…もしかして、またあのときと同じ繰り返しを、せにゃならんのでしょうか?
 たしかにハシンタ二世には、違う身体でうちに戻ってきてほしいです。でも何もそういうとこまで、厳密に同じでなくてもいいんだけどな……



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 帰路ずっと、猫バッグの中で絶叫していた、かわいそうなキラ猫さん……
 うちに着いても、引き続き叫んでいます。音声をお伝えできないのが残念です。
 きっと先住猫のハスミンが、この騒ぎを聞きつけ、すぐ取り調べにやってくるかと思ったのですが…



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 ハスミニは、寝ていた椅子から一歩も動こうとしません。
 ただ、深ーい非難をこめた眼差しを、私と猫バッグに交互に向けるだけです。返って強い圧迫感…



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到着時のキラ猫、改めハシンタ三世


 もう家まで連れてきちゃいましたから、新猫は正式に、ハシンタ三世と改名させましょう。
 さてバッグを開けると、案の定、寝台の下に駆け込みました。水や敷物だけ入れてやって、しばらくそっとしておくことにします。
 …それにしても、このものすごいデジャブ感は、いったいなに?!



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.

到着時のハシンタ二世。
懐かしいねえ…


 今度のハシンタは、前のハシンタより二回りほど小さくて、また模様もかなり違う…と思っていました。
 でも寝台下から、さも疑わしそうにこちらを見るその雰囲気は、ほぼ同じ猫……これは喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか…



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 この日は、ハスミニとハシンタ三世のあいだに、接触は一切ありませんでした。


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 それぞれ居間と寝台下に陣取り、だんまりのまま、ただ緊張感をみなぎらせています。


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 翌日(1月3日)。ハスミニ猫は寝台下を気にして、匍匐前進中。なんか眉間にしわがよってますね…


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 ハシンタ三世のほうは、だいぶ落ち着いてきたようです。
 まだ寝台下にこもってはいますが、手を伸ばせば、いくらでも撫でさせてくれます。
 私たちは幸運なことに、毎回「どこをさわっても喜ぶ猫」が当たります。「どこをさわっても怒る猫」も、わりとよくいるんですけど。



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 そして1月4日。とつぜんハシンタ三世が、ちょろっと寝室から出てきましたーー!
 夜10時のことです。



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 居間でくつろいでいたハスミニ猫は、ハシンタ三世に気づくと、一瞬全身を固くします。
 そして、「横に置いた刀にすばやく手をかける」みたいな動きをしたものの、すぐまた前あしを伸ばして座りなおします。
 新入りは大いに気になるけれど、小柄な猫なので、怖くはないようです。



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 ハシンタ三世のほうは、じわじわ前進して居間まで出てくると、爪とぎに陣取りました。ほんの十日前まで、ハシンタ二世が座っていたところです…(涙、涙)
 どうやら今度のハシンタは、Nさんが言うほど気は小さくないようですね。というか前のハシンタが、桁外れに小心すぎただけかな?
 私たちもこれで、三世の全身を見せてもらえましたが、ぼやぼやっとしたブチの感じは、二世よりも一世似ですね。



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 二匹は無言のまま、まなざしだけで攻防戦を繰り広げています…
 はたで見てると、こっちも神経が疲れます…



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 ハスミニ猫のものすごい眼光に負けて、いったん寝室に退却するハシンタ三世。


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 この日から、ハスミン猫の厳しい監視が始まりました。
 (まだ1月4日なので、うちもまだクリスマスシーズン中です。ていうか白状しますと、後日飾りをはずした緑一色のクリスマスツリーが、居間のすみでずーーっと観葉植物化してたのを、今日4月1日、やっと宿六とベンハー君が片付けたんですよね…)



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 いえ私たちも、いちおう別猫とわかってるんですけどね…
 ハスミニ猫は、目が覚めているときは常時、新猫の動きに目を光らせています。



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 …と、そっけないハスミニ。
 でも一匹でぼんやりしていたときより、明らかにピリっとして元気そうです!
 偽ハシンタ監視という任務?ができたのも、なんだかんだいって嬉しそうです。



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 かくして、ハシンタ三世の配達&開封は、とりあえず三日で完了しました。二世に比べると早かったなあ…
 このあと、やきもち焼きのハスミニがどう出るでしょうか?続編にご期待ください。


 ところで、猫が喜ぶ例の箱が、うちではさいきんますます増えております。
 それというのも、米国Amazonには現在のところ、「ペルーまでの海外配送無料オプション」(プライム会員である必要なし)という、この世のものとも思われないほど恐ろしい選択肢があるのですね…(今日は4月1日ですけど、エイプリルフールとは無関係です、念のため)


 一部該当商品(といっても各ジャンルが網羅された、膨大な商品数)の中から、49ドル以上まとめて注文すると、当地までの送料がゼロになります。(Amazonで49ドル分のほしいものを選ぶのが、どれほど容易かは、申し上げるまでもないかと…)
 さらに一回の注文金額を200ドル以下にしておけば、通常ペルー到着時に税金もかかりません。また配送はふつうDHLで、リマのはずれのパチャカマックでも、発送後数日で届きます。
 ということはですね、ペルーには存在しない「国内のAmazon」で買いものするのと、ほぼ同じ気分で利用できてしまうわけです。



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すぐに張り合うハスミニ


 先日、まだこの恐ろしい仕組みを知らなかった歯医者さん(ペルー人女性)に、治療中にお話ししたところ、歯科用接着剤を混ぜる手がピタっと静止し、
 QUE EMOCIOOON ! (すばらしい!たまんないわね!!)
 と絶叫しておられましたが、まったく同感です。本当にありがたいオプションです。


 しかし、今まではポチる寸前に、巨額の「海外発送料」が、辛うじて私の理性を呼び戻してくれていたのです。
 その歯止めがなくなるというのは、大変なことです。現在この「ペルーまでの海外配送無料オプション」が、わが家の財政をかなり揺るがせております…



<猫くらべ>



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キラ猫改め、ハシンタ三世を、右側から見ると…


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かわいいハシンタ二世を思い出します。


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そしてハシンタ三世を、左側から見ると…


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 懐かしいハシンタ一世を思い出します。
 性格もどうやら、一世と二世の中間らしいのですが、まだよくわかりません。追い追いはっきりしてくると思います。



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 瞳の色は、ハシンタ一世は薄緑。時と場合によって、黄色寄りだったり、緑寄りだったりします。


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 ハシンタ二世は、性格にぴったりな、優しい薄黄色。


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 うんと大きな瞳のハスミン猫は、一世も二世も淡い緑です。


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「やっと私の出番が来たか…」
とハスミニ猫(ハスミン二世)


 やはり時と場合によって、黄に寄ったり緑に寄ったりします。


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 そして新入りのハシンタ三世は、オレンジがかった蜂蜜色の瞳です!
 身体のわりに耳がとびきり大きいのも、特徴です。


 今はまだハシンタ三世の中に、ついつい懐かしい一世や二世のおもかげを探してしまいます。でも三世は、この小さめだけれど迫力ある瞳で、個性をしっかり主張しています。
 これまでおつきあいがあった猫たちは、みんな二色の濃淡になった、いわゆるヘーゼル色の瞳でした。なので、まるでカンロ飴みたいな、単色のこの瞳を見たときは、かなりドキッとしました。見慣れるのに、少し日数がかかりそうです。



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 またハシンタ三世は、背中のまんまんなかという、変なところに白い模様がひとすじ入っています。ジッパーなのかな?まさかここから毛皮を脱ぎ着するとか…?
 でも宿六がふと、「仔豚の貯金箱みたいだ」と言ったので、ただちにアルカンシーア(Alcanci'a)という別名がつきました。
 アラビア起源のことばの常で、アルカンシーアも響きがいいですよね、単に貯金箱って意味ですけれど。


 こうしてわが家にやってきた、金目の貯金箱猫。たいへん縁起が良さそうです。
 「ペルーまでの海外配送無料オプション」による浪費も、きっとこれからは、彼女がなんとかしてくれますね!





2024年2月26日(月)


<クリスマスのお別れと、新年の「再々会」>

2)健気なハスミニ猫



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おなかを見せて甘える
ハシンタ二世


 ふかふかの白いおなかが魅力の、ハシンタ二世が旅立ったのは、満月の二日前でした。
 一代目の二匹は、どちらも新月の二日前に出立しています。月の満ち欠けは、やはり地球上の生命と、なにか関係ありそうですね。



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 月が明るいだけに、いっそう悲しい晩でしたが、大きななぐさめになったのがハスミニ(ハスミン二世)の存在です。
 本体が元気に飛び去ったあと、眠りについたハシンタのからだをソファに連れていき、くるんと丸まったかわいい姿に寝かせ、となりに座って名残りを惜しんでいると、ハスミニ猫が音もなくやってきました。
 そしてソファの背に登って香箱を作ると、静かにハシンタのほうを見おろしながら、私たちの気が済むまで、じっと付き添っていてくれました。



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 二世は二匹とも、もうちょっと鳴いてほしいくらい、静かで無口な猫たちなのですが…
 クリスマスの翌日から、ハスミニ猫が急におしゃべりになりました。寂しくなった家の空気を、ちょっとでも賑やかにしようというのか、いつになくニャアニャアと声を出し、私たちに「遊ぼう遊ぼう!」と呼びかけてくれます。



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 さらには、日ごろはさほど寄りつこうとしなかった(笑)宿六の横に、ぴたっとくっついて眠ったりもするようにもなりました。
 明らかに、私たちに気を使ってくれていました。



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 ハスミニ猫は健気にふるまいつつも、やはり相棒がいなくなって気落ちしたのでしょう、こんなふうにぼんやりと放心している姿も、時々見かけるようになりました。およそハスミニらしくなくて、とても心配です……
 今まではいつも二匹いっしょでしたから、私たちは外出時も安心でした。でも今後は、暗い家でぽつんと一匹、こんなふうに待つのかと思うと、うっかり外出もできません。


 これはやはり、ハスミニに元気になってもらうためにも、早くハシンタ三世(二世のあとつぎ)を探したほうがいいのではないか、ということに、だんだんとなっていきました。
 そうはいっても、かわいいおへちゃ猫とは、つい数日前に別れたばかり。涙も乾いていませんから、後釜猫は数か月かけてゆっくり探すつもりで、ともかく猫の里親探しサイトだけ、チラチラと見始めたのでした。



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 …すると思いがけず、すぐ目についてしまったのが、この写真です。
 半年前にも同じ広告を見て、「好みの色だなあ」と思った猫でした。うすぼけ三毛は絶対数が少ないですし、またこの写真には、ハシンタ一世と二世のちょうど中間くらいの、ある「感じ」があります。
 宿六にも見せると、やはり同じことを思ったのか、「今すぐ!今すぐ問い合わせよう!」とえらく前のめりです。



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 連絡をとってみると、この「キラ猫さん」を世話しているのは、リマの反対側に住む若い女性のNさんでした。
 そのNさんからの第一信は、「キラへの問い合わせは初めてです、もう感動しちゃってます!!(涙目マーク)」というものでした…うう…いかん……。私はまだ冷やかし半分の気持ちでしたが、これはご縁があるのかもしれません…


 Nさんは現在15匹もの、元捨て猫のめんどうをみているそうです。キラ猫さんに矢印をつけて、写真を送ってくれました。


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 キラ猫さんは、Nさんの家に毎日エサをもらいに来ていたノラで、引き取ったときには、こういうヨレヨレの状態だったそうです。


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 その後、実はおまけつきで来たことが判明…(ノラちゃんあるある)。そしてまもなく、かわいい仔猫を三匹、無事に生み落したそうです。
 (この優しいまなざしと色柄が、ハシンタ一世っぽくもあり二世っぽくもあり…なんかわるくないなあ…いかんなあ…)



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 仔猫たちは、猫好きの良いおうちにそれぞれもらわれて行ったそうです。
 今も定期的に写真をお願いしては、幸せそうな様子を確認して嬉しく思っている、とのこと。Nさんは個人でやっているのに、ちゃんと里子の追跡調査もしているのは、たいへん感心なことです。


 「私の猫を引き取る人には、もうひとつだけお願いがあります。もし先々何らかの理由で飼えなくなったときは、必ず私のところに返してください、ということです」
 というNさんのお話にも、大いに心を打たれました。Nさんは本当の猫好きで、だから一時的に預かっている猫たちのことも、いつまでも忘れないのですね。



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出産と乳離れ後に、
手術を受けたキラ猫さん。



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猫エイズと白血病の
検査もしてもらい…
(どちらもシロ)



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 今はふっくら太って、こんな感じだそうです。
 推定2、3歳だそうですから、まだ約6歳と若いハスミニとの、釣り合いも良さそうです。また出産経験があるのも、ハスミニと話が合いそう?です。


 Nさんからは、「年明け二日以降なら、いつキラを見に来てもらっても大丈夫です」と連絡がありました。
 とはいえ、かわいいおへちゃのハシンタを見送ったのは、まだほんの一週間前…。私は相当に複雑な気分でしたが、宿六にたずねると、涙目&絞り出すような声で、「すぐにハシンタに会いに行きたい…」と言います。こりゃあだめだ……
 (つねづね思ってはいましたが、「私の死後には、こいつ速攻で再婚するな」と、改めて確信(笑))



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 2023年の大晦日。
 例年は庭に出て、アルパカといっしょにご近所の花火を見物しますが、今回は中庭からチラっと見ておしまいです。花火の騒音の中、ハスミニをひとりにしたくないですから。


 「ハシンタ二世がそこにいた2023年」が終ってしまう悲しさが、じわじわとこみあげてきます。
 でもそれと同時に、ハスミニがいてくれる嬉しさや、来年はもしかしたらハスミニの新しい相棒が見つかって、やがてそこにハシンタ一世&二世の個性が溶けこんでいき、また懐かしい猫たちと、みんないっしょに暮らせるかもしれない、という期待…
 いろんな思いでいっぱいで、新年早々、とうとう朝まで寝つけませんでした。だいぶワイン(夏にぴったり微発泡の、ポルトガルのビーニョ・ベルデ)がはかどりました。



2024年2月16日(金)


<クリスマスのお別れと、新年の「再々会」>

1)とつぜんの旅立ち



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私は「おへちゃ」なんて呼んでましたが、
こうしてみるとハシンタ二世は、
けっこう美猫でしたね…


 昨年のクリスマスの晩に、かわいいおへちゃ猫のハシンタ二世が、とつぜん旅立ちました。
 ハシンタは去年なかばに、少し不安定だった時期がありました。でもさいごの数か月は、よく食べて、毎日盛大に甘えてくれたので、すっかり安心していたところでした。


 さいごの日々、昼は欠かさず山羊ヨーグルトをたっぷり飲みました。
 夕食メニューのほうは、12月23日が地鶏レバーと卵の黄身をすりつぶしたもの。味わってしっかり食べました。
 24日は、pericoという白身魚(シイラの親戚)と地鶏の自家製スープ。魚好きなハシンタは、お皿の上に乗り出すようにして食べました。
 そして12月25日の晩は、旅立つわずか5時間前!に、地鶏とレバーの自家製ペーストを、私の指からせっせと舐めとってくれました。


 ただ24日と25日は、いつも以上におとなしく、また呼吸のしかたが少し変わったことには気づいていました。
 「でもよく食べているし、まさか今すぐ、なんてことはないよね?まさかね?」と、宿六と何度か話はしていました。やはり私たちにも、うっすら予感はあったようです。


 「ハシンタはほんとうに今夜、旅立つつもりらしい…」と私たちが悟ったのは、やっと3時間前になってからでした。
 そのあとはときどき場所を変えながら、横たわっていましたが、ハシンタ猫が大好きな(でもあやしいので飲ませないようにしていた)リマの水道水を、器に入れて鼻先に置いてみると、きりっと座りなおしておいしそうにたくさん飲みました。もしかすると元気が出たのかも、と期待してしまったほどでした。


 そしてさいごは、寝室のすみっこにパタパタパタッ!と勢いよく走っていって、そこで横になって深い呼吸を幾度かすると、もう身体から飛び去ってしまっていたのでした。


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 うらやましいほどの、自然な出立でした…。
 私たちは、もしかすると一晩はつきそうことになるかも、と覚悟していましたが、あっというまにきれいに終りにしてくれて、とことん飼い主に優しい猫でした。



 5年前に別れた一世猫たちも、さいごの日まで「元気」でしたが、でも数か月かけて少しずつ習慣を変えながら、少しずつ老いていったので、旅立ちの支度をしていることは明らかで、それだけに悲しさ寂しさは格別でした。
 でもハシンタ二世は、飼い主にそんな苦しみを与えることもなく、たった半日でテキパキと荷造りをして、さっと飛び去っていきました。


 ハシンタ二世は、7歳すぎまで保護施設で引きこもっていた猫です。なので、一世たちほどの長生きは期待できないと、わかった上でもらってきました。
 それでもうちに来ると明るく元気になって、毛並みもつやつやでしたから、あと3、4年はいてくれるかと思っていました。
 結局は、たった3年半しかいっしょに過ごせなかったのですが。


 でもその3年半は、私の意識が根底から揺り動かされ、それ以前とはまるで違うものに変わった(もしくは、本来そうあるべき状態に戻った、と言ったほうが正確かもしれません)、たいへん濃密な3年半でした。
 表向きは静かに暮らしながら、心の中はジェットコースターに乗っていたような日々、ハシンタ猫はハスミン猫といっしょに、私のそばにぴったりくっついて、ともすればどこかに飛んでいきそうな私を、地上に引き留めていました、「まだここでやることがあるでしょう?」と。だからもっとずっと長いこと、いっしょにいたような気がします。


 ハシンタ二世の急な旅立ちのあと、私は不思議な感情を経験しています。とても悲しいにも関わらず、そこには辛さや苦しさがほとんどないのです。ただただ静かなきれいな悲しさだけです。それはハシンタ二世の存在を、元気なハスミニと同じくらいはっきりと、今も身近に感じているせいかもしれません。
 たぶん私はもうだいぶ前に、「この世」という夢からは、目を醒ましていたようです。そのことを悟らせてくれたのが、ハシンタ二世のさいごの仕事でした。



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旅立ちの一か月前。
ふっくらつやつやです。



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 台所の作業テーブル下の、定位置で。
 猫たちはカサカサする紙袋や紙箱が大好きなので、少々見苦しいですけど、いつもいっぱい置いてあります。



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 さいごまで良く食べてくれて、おかげで「動物は食べてるあいだは大丈夫!」という信念は、くつがえされてしまったなあ〜!


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 うちの二猫はとにかくお上品で、食事を催促して騒いだりは、まったくしません。
 ハシンタ二世はいつも、朝は台所の定位置で、「お膳」(プラスティックかごをひっくりかえしたもの)の前にきちんと正座して、静かに配膳を待っていました。
 写真は、ハシンタが自分のぶんをすぐ平らげたので、ハスミニが残したもう一皿を持ってきてあげたところ。うーんほんとさいごまで、よく食べてくれましたねえ。



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 新しいクリスマスツリーとも、いっしょに写ってくれました。これでまたクリスマスツリーを出すたびに、ハシンタ二世を思い起こせます。


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 ハシンタ二世ご遺愛の、段ボール製の爪とぎソファ。
 さいごの数日も、ここにゆったり座って身づくろいしたり、爪とぎしたりしていました。
 猫は、「身づくろいや爪とぎをしている間は大丈夫!」という信念もまた、くつがえされちゃったなあ。


 …でもじっさいのところ、何がいちばん「大丈夫な状態」なんでしょうね?
 ペットはたぶん、この世での飼い主サポートの仕事を終えて、いったんあちらに戻って、ほんとうの意味で飼い主の魂に溶け込んでいるときが、「いちばん大丈夫」なのかもしれませんよね。



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 ハシンタ猫は、なぜか「バカにゃん!」と呼ばれるのが好きでした。
 おひるの片づけを終えたあと、寝室に行って「バカにゃーーん!おいで!」と呼ぶと、「ニャッ!」という歯切れ良い返事とともに、ぽーんとベッドに飛びのって、アルパカ毛布(20年以上、代々の猫たちが使っている毛布)で作った輪っかの中におさまります。この写真のように。


 そしてそれから夕方までは、おなかさわり放題、という決まりになっていました。
 ハシンタ二世ほど、おなかを撫でられるのが好きな猫は、初めてです。大きめな猫だったので、おなかの撫でまわし甲斐も大いにありました。



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 12月18日、旅立ちの一週間前。
 この日はいつものお昼寝会に、珍しくハスミン二世も参加しました。ふだんは別のところで昼寝をするのですが。



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 私も二匹のあいだにはさまって、幸せなうたたねをしました。そしてこれが、ハシンタ二世といっしょにお昼寝をした最終日となりました。
 あとから思うと、猫たちなりのお別れ会だったのでしょう。


 右はハシンタ二世のさいごの写真です。大好きなポーチでくつろいでいるところです。
 この写真を撮ったとき初めて、なんだか急に少し年をとったみたい…と感じました。(あ、でも胸の毛並みが毛羽立っているのは、こぼした地鶏スープを自分でなめなめしたせいで、加齢とは無関係(笑))


 ハシンタ二世は、飼い主の私たちにとても優しい猫でした。さいごの日も、近づくところんと転がって、まっしろな大きなおなかを撫でさせてくれました。


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 ペルーでいっしょに暮らし、それから見送った三匹の猫たちは、みんなさいごまで自分の足でトコトコ歩いて、自分で旅立つ場所を選んで、家族だけに囲まれて自然に旅立っていきました。それにはとても満足しています。
 私も同じように、「そのとき」は自分の意志で選んで、身体からはしずしずと歩いて外に出て、このアホ星を嬉しく後にしたいですから!



<2023年の猫アルバム>



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 ハシンタ二世はおとなしくて、「舌のしまい忘れ」以外は、華々しい写真が撮れないため、今までここにはあまり載せませんでした。
 でももちろん写真は、山ほど撮ってあります。今回はお別れに、おへちゃのハシンタ二世を中心としたアルバムを作ります。主に宿六のために。



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家具の上でくつろぐ二世の二猫。


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お昼のヨーグルトを飲んで、
全身なめなめしたあとの、
白リャマとのお昼寝


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白リャマ増量。


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またしまい忘れてる…


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おなか撫でて!と
甘えるハシンタ二世



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「それなら私だってできる!」
とハスミニ猫



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 でもハスミニは、おなかなでなでは数分で飽きてしまいます。
 ハシンタ二世はいくらでもOK、おなかに手をのせたままこちらが寝落ちしても、まったくいやがりませんでした。



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 夏の晩、コオロギやヒキガエルを仲良く観察する二猫。


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 ブドウが豊作だった2023年夏。
 (今年2024年の夏は、前の冬が暖かすぎたせいか、不思議なことにブドウは一房も実っていません。葉だけが茂っています)



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 ポーチのハシンタ様専用椅子で、過ぎゆく夏を眺めるハシンタ二世。


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 少しひんやりする日には、かっちり固巻きになります。
 ポーチで外気を楽しむのが好きなハシンタ二世。ちょっとくらいの寒さなら、こうして固巻きになってでもポーチでがんばってました。



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冬の珍しい晴れ日に、
ポーチで日向ぼっこ。


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 ハシンタ猫は、冬になってもまだポーチで固巻きになっているので、そういうときは毛布でくるんでやります。
 するとスキー場の外のテラスで、あったかくして優雅に雪を眺めているかのような、なにやら富裕層っぽい猫に見えます。サングラスが足りないな。



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 でもいよいよ本格的にジメジメ寒くなると、二猫そろって、湯たんぽを置いた窓辺に移動します。
 前の冬はエル・ニーニョのせいで、幸いそんな寒い日は少なかったですけれど。晩年だったハシンタ二世にはなによりでした。



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 2023年に買って良かったもの、第一位。段ボール製の爪とぎ。(あらハシンタ猫、味見してる?)
 これまではAmazonの箱など使って自作していましたが、めんどくさすぎます。もう還暦だし!これからはその手の努力はやめます。



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「これなら太目の私も、
余裕をもって転がれます」


 ちょっと巾が足りないので、二個つないだらちょうど良くなりました。


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 猫ってほんとうに段ボール好きですよね。
 夏も冬も居心地がいいらしく、クリスマスのお別れまで、ハシンタ二世が座らない日は一日たりともありませんでした。



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 たいへんなご好評を頂いたので、もっと座りやすそうなソファ型も買ってしまった。ハシンタ猫のこの嬉しそうな様子!プライスレス!


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 段ボールグッズのほかに、干して畳んだ洗濯物も、猫ホイホイとして活用できます。
 どちらも猫を座らせたい場所に設置すると、即効性があります。猫飼いの常識ですよねこれ。



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 宿六も私も大好きだった、ハシンタ猫の背中の模様。どことなく和猫風の、鮮やかなブチの持ち主でした。
 パステル三毛にはいろんな色調がありますが、二世は濃いめの色柄でしたね。



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逆光でもくっきり見えるブチ模様。


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 今日はハシンタが主役なのね…と、ちょっとつまんなさそうなハスミニ猫。


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 かわいく見えるのがわかってやってるこのポーズ…


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 ハシンタ猫のお作法。水は必ず、まず丁寧にぐるぐるとかきまぜ…


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 手を舐めて味見して、それから本格的に飲みます。
 これを毎日やられると、ちょっとたいへんです。ポーチの砂ぼこりが水に入ってしまって、何度も替えないとなりませんから。でもそれすら今では懐かしいです!



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 ハスミニのほうは、ごろんと横になって、なぜか片足をあげて飲むのが好きです。


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 あいかわらず、わかりやすいかわいさ大安売りのハスミニ猫。
 (ハシンタ猫のためにエサを出しっぱなしにしていたら、こっちの猫のほうが太ってしまいました…。いま軽くダイエット中です)



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初夏の到来を喜ぶ二猫。


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結局いっつも
いっしょにいた二猫。



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 早めのクリスマスプレゼントで遊ぶハスミニ猫。


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 ハシンタ二世も、ぎゅーっとボールを抱きしめています。
 このあとまもなく旅立つなんて、あまりにも思いがけなさすぎて、今でもときどき改めて驚いています…
 いちばん懐かしいのは、やはりあのふかふかの、豪華な白いお腹です!



2023年12月21日(木)

この時期定番の話題
<猫とクリスマスツリー>



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 長年使ったクリスマスツリーが、とうとう自然崩壊し始めたので、今年はツリーを新調しました。
 11月下旬に買いに行ったところ、すでに在庫一掃叩き売り!状態だったのには、驚きましたが…。このごろはみなさん、クリスマスの準備は9月10月から始めるのが、ふつうなのだそうで。



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 昨年までは、猫がのぼって倒さないように、細身のツリーを柱にきりきりと縛りつけて飾っていました。
 でも二代目の猫たちはお上品で、いたずらもほとんどしません。そこでダメもとで、もっと幅のあるツリーを自立させてみることにしました。
 するとすぐにハスミニ猫が、ペシペシと枝を叩いて遊び始めたので、少々不安に思いつつ…



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 ともかく枝を広げて、ライトだけぐるぐる巻きつけて、あとは一晩様子見です。
 うしろのタコ足配線、なんとかなりませんか宿六君?



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 ハスミニ猫は、こーんな無害そうな顔をして、「おかあさんツリーは私が見てるから、安心して眠ってね」と言っております…


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 結局クリスマスツリーは、まったく無事でした!!数日たっても、なにも起きません!良かったー!
 安堵して飾りつけ始めると、ハシンタ二世がそうっとやってきました。
 今年のハシンタ猫は、神経症らしきものを起こし、引きこもりがちで大いに心配しました。でもこのところ元気が出てきて、みな喜んでおります。


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 小鳥の飾りがほんとにしんでいるかどうか、熱心に調べるハシンタ二世。


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 ハスミニとはちがって、なかなか写真が撮れないハシンタ二世。
 それがめずらしく、良いところに座ってくれました!



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 …と思ったけど、構図を決めるひまさえ、私には与えて下さらず、静かに立ち去られたのでした。


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 ツリーは新調しましたが、飾りは古いものばかり。でも今年はひとつ、新しい良いことを思いつきました!

 ツリートップに飾るベツレヘムの星は、三十年ちかく気に入るものが見つからず、紙製のを使い続けていました。でも暖炉前で飾りつけをしながら、ふと上を見やると…
 そこには宿六のメキシコ土産の、大きな星型ランプがぶらさがっているではありませんか!もしかしてこれ、ぴったりじゃない?



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 天井から下がるコードを少し短くして、それからツリーをそうっと動かし、真下に持ってきてみると……こうなりました!

 星が大きすぎるところに、なにやら古風な味があります。またいくら星が重くても、これならツリーが傾く心配がないのも、最高です。
 私はなんで今まで、気がつかなかったのでしょう?!



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 その後も猫たちは、ツリーには一切わるさをせずに、今日にいたっております。たぶんこのまま、クリスマスシーズンを乗り切れそう。
 ただハスミニは、小さなものにはけっこう手を出します。食卓の即席飾りも、はじめは横でかわいくポーズをとっていましたが…



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 ちょっと目を離したら、即、破壊活動に着手しておりました。ドイツの飾りちょっと壊された(怒)


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 また居間のすみに、小さなクリスマスツリーを飾ると、隣に来てちんまりと座って、かわいこぶっていましたが…


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「テヘッ!」じゃないって、
ハスミニ!


 とつぜん立ち上がると、えいやっとツリーに全体重(チビだけど重い)をかけて、もろともに床に転落!
 「私だって世間の猫なみに、ツリーの1本や2本、倒せるわ!」と、たいへん満足そうです。そうですね、たしかにこれでも、1本は1本。

 Have yourself a meowry little Christmas !


2023年8月4日(金)

<猫とその獲物>



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 暖冬がつづく7月のある日。
 ハチドリがポーチに飛び込んできました。ナスカの地上絵の、有名なハチドリ図のモデルといわれる、チャムネエメラルドハチドリです。



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 星型の灯りにとまったハチドリを見上げて、「あれ捕ってーーーっ!」と鳴くハスミニ猫。
 (無口なハスミニ猫が、珍しくミャーミャー連呼しているのに驚き、あわてて見に行くとこういう状況になってました)



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 拡大図。おお立派なキバ。
 ハスミニは小柄なので(横にはうんと太ったけど…)、キバもツメも、先端が針のように細く尖っていて、人間にグサっと刺さりやすく危険です。



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ああ我が人生は退屈なり


 ビューン!ビューーン!と目にもとまらぬ速さで飛ぶハチドリを、運動不足の家猫さんが捕まえられるはずもなく…
 飛び去ったあとは、空しくフテ寝をするのみ。



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 日ごろはかわいさを売りにしている?ハスミニですが、ときおり非常に野性的な表情を見せてくれます。


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ただのあくび。でも豪快。


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白いチョウチョウを追う
ハシンタ一世。


 猫は家に閉じ込めて飼っていると、長生きしやすくて安心ですが、当の猫たちはやっぱり相当に退屈していると思います。
 なのでハチドリのようなたまの訪問者は、いつも大歓迎されます。



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♪♪♪
ディスコクイーン・ハシンタ
♪♪♪



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 今ではハシンタ二世のすっとぼけた顔に慣れたので、一世の写真を見ると、顔の黒さと眼光の鋭さにびっくりします!
 懐かしいねえ。



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庭の小型ドラゴンと対峙する
ハシンタ一世



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ハスミン一世は、アマゾン川へ釣りに行きました。


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 そしてハシンタ二世は、じぶんのしっぽを捕まえ、満足そうです。
 猫のしっぽは、本人の意志とは無関係に動くので、これがいちばん難しい獲物かもしれません。



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